【映画紹介】「ブレードランナー」素晴らしきその世界観
リドリー・スコット監督の傑作SF映画『ブレードランナー』。続編『ブレードランナー 2049』が2017年に公開されたことにより、再び注目を集めていますよね。
今回は、「続編が気になるのだけれど、前作を観たことがない。」、「名作と言われているけれど、昔の映画なのでなかなか手が出ない」というブレードランナー未視聴の方向けに、本作の魅力を簡単にお伝えしたいと思います。
1.基本情報
公開年:1982年
上映時間: 118分(初期劇場公開版、ファイナル・カット)
ジャンル:SF、サスペンス
監督:リドリー・スコット
脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
音楽:ヴァンゲリス
キャスト:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ、 ジョー・ターケル、他
2.概要
2019年、惑星移住が可能になった未来。レプリカントと呼ばれる人造人間が謀反を起こし、地球に侵入。レプリカント専門の捜査官“ブレードランナー”のデッカードは追跡を開始する。一方、彼は製造元のタイレル社でレイチェルというレプリカントに会い、心を通わせていくが……。熱心なファンによって支持され、カルト化したSFハードボイルド・アクション。監督リドリー・スコットの映像センスは絶賛され、その人気を不動のものとした。92年に再編集された「ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版」が公開された。
3.予告編
4.評価
全体:★★★★★
脚本:★★★★★
映像技術:★★★★★
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★★★☆
5.魅力
SF映画と聞くと、スターウォーズなどのSFアドベンチャーを想像する方が多いと思いますが、本作は万人受けするようなSF映画ではありません。どのような映画であるかを一言で表すならば、フィルム・ノワールの成分をもつSFハードボイルド映画だと思います。
どちらかと言えばオタクが好むような作品であり、家族や恋人と楽しむタイプの映画ではありません。
しかし、ブレードランナーには、一度見たら忘れられない魅力が詰まっています。
・退廃的で混沌とした世界観
ブレードランナーが名作と評価される大きな理由の一つに、誰も見たことがなかった新たな未来像を表現したという点があります。
既に語りつくされていることなので、詳しい説明は省きますが、ブレードランナーが公開される前、SF映画で描かれる未来というものは、非常にクリーンなイメージで、誰もが優れた技術を使って便利な生活を享受している世界でした。
ブレードランナーの監督であるリドリー・スコットは、そのような既存の未来描写からは程遠い、汚く混沌とした世界を優れた映像表現で作り出すことに成功したのです。
例えば、ブレードランナーの舞台である2019年のロサンゼルスは、ひっきりなしに酸性雨が降り注ぎ、空は真っ暗で、昼も夜もわからない状況になっています。
また、新宿をモデルにしたというロサンゼルスの界隈には様々な言語(日本語、中国語、英語)が飛び交っており、アジアと西洋をごちゃ混ぜにしたような町が出来上がっています。
この斬新な未来描写は、以降の様々なSF作品に大きな影響を与えました。
例えば、押井守監督の映画版「攻殻機動隊」にも似通った街並みが登場します。おそらく、押井監督がブレードランナーに影響されたものだと思います。
・ハードボイルドな探偵もの
本作の主人公であるデッカードは、人間の指揮下から離れたレプリカント(アンドロイド)を捕まえるブレードランナーという職業に就いています。
持ち場の星を脱走し、地球に逃げ込んできたレプリカントをデッカードが探索するというのが、本作のストーリーの大筋です。
非常に暗い世界観であることも加わり、本作は探偵を主人公にしたフィルム・ノワールであると評されることがあります。
この点で好き嫌いが分かれるかもしれませんが、ハードボイルドな探偵ものが好きな方には、オススメできる内容です。
・魅力的な敵キャラ(レプリカント)
デッカードが探し出すレプリカントは、一見人間と変わらない外見をしていますが、優れた頭脳によって感情が生まれることを防止するため、4年間という期限付きの命が与えられています。
この命を何とか伸ばすために、レプリカントが持ち場を脱走し、ロサンゼルスに侵入するというストーリーになっています。
人間にしてみれば、知力・筋力に優れるレプリカントは脅威であり、一刻も早く使えまえる必要があるのですが、彼らも生きるために必死であり、何とか寿命を延ばそうと様々な手を尽くします。
人間に作られたが故に、自由がなく寿命も短い彼らの悲しみや怒りは、彼らを処分しようとするデッカードを通して観客に伝わります。
特に、レプリカントグループのリーダー、ロイのラストシーンは必見です。
生みの親であることを理由に、感情が芽生え始めたレプリカントを一方的に処分する人間。かたや、延命のために手段を択ばないレプリカント。
これからブレードランナーをご覧になる方には、デッカードだけではなくレプリカントの視点も意識して物語を追っていくことをお勧めいたします。
これから先はネタバレありの感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
6.感想
・レプリカントの主張=本作のテーマ
先ほど、本作を一言で評するならば、「フィルム・ノワールの成分をもつSFハードボイルド映画である」と書きましたが、あくまでそれは表の面であり、本作のテーマとも言える裏の面が隠れています。
本作を別の言葉で評するならば、「創造主(人間)に近しい存在になろうとするロボットの映画である」と言うことができるかと思います。
映画としては、人間(主人公サイド)、レプリカント(敵方)という構図になっていますが、物語の主軸にいるのは確実にレプリカント(敵方)であると私は思っています。下記の3つが主な理由です。
①レプリカントは長く生きたいという希望をもっているだけで、暴走したわけではないこと。
→今よりももっと長く生きたいという気持ちは、感情が芽生えた結果によるもの。
②どんなに強く主張しても、延命することができないレプリカントは、社会的弱者を想起させること。
→身体能力などで、レプリカントは人間を凌駕するが、命の期限は人間に握られている。
③デッカードはレプリカントを駆除するブレードランナーだが、人間とほとんど変わらないレプリカントを殺すことに苦悩している。
→最終的に、デッカードはレプリカントのレイチェルを連れて脱走する。
以上のことから、私は本作の真の主役はレプリカント達であり、デッカードは彼らの主張を伝えるための狂言回し的な立場であると解釈しています。
本作における創造主(人間)と被造物(レプリカント)のテーマ性は、リドリー・スコット監督の『プロメテウス』、『エイリアン コヴェナント』に継承されています。
『プロメテウス』、『エイリアン コヴェナント』はアンドロイドが創造主になろうとする映画であると評することができますので、ブレードランナーのテーマを引き継いだ続編と言えるのかもしれません。
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