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【感想】英国王のスピーチ

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数多くの映画を観ていると、ド派手な大作映画よりも、地味で静かな映画を好む時期が度々やってくる。

 

そんな時期にぴったりの映画が、この「英国王のスピーチ」だ。第83回アカデミー賞で作品賞を含む4つの賞を受賞したことで有名な作品である。

今日は、この「英国王のスピーチ」の感想記事をつらつらと書いていきたい。

 

1.最初の印象は地味な映画

私が本作を観るのはこれが2度目になるのだが、初めて観たときの感想は、評判よりもずっと地味な映画だな、というものだった。イギリス国王ジョージ6世が吃音症を克服する映画、と聞いていたので、ジョージ6世がどのようにして吃音症を克服するのか、その方法や過程に迫った映画であると思っていたからだ。

 

しかし、蓋を開けてみると、この映画はジョージ6世が吃音症を克服する過程を描いた映画というよりも、彼がどのような人間で、どのようにして国王になり、何に悩んでいたのかを、彼の人間性を深く掘り下げつつ描いた映画だった。

 

そのため、ストーリー自体は実に淡々と進み、ドラマティックな展開もあまり観られない。ラストは第二次世界大戦勃発後のスピーチなのだが、ラジオ放送用の小部屋からスピーチを行うため、絵的には実に地味である。

 

だが、地味だからと言って、本作は決して退屈な映画にはなっていない。

 

2.演技合戦映画とはこのこと

1人の歴史上の人物を掘り下げるにあたり、重要になってくるのは彼の置かれていた環境を上手く視聴側に伝えることである。

 

つまり、本作を成功させるために最も重要な点は、吃音症に悩む主人公を如何にリアルに演じ彼の内面や置かれている環境を観客に伝えるか、ということだったと思う。

 

コリン・ファースは非の打ち所がない演技を見せ、国王としての自信が持てない主人公を実にリアルに演じている。

一方、ローグ言語聴覚士を演じたジェフリー・ラッシュの演技も素晴らしく、彼の巧みな演技によって、神経質でなかなか心を開かないジョージ6世人間性がより強調されている。

 

本作は実に淡々とストーリーが進んでいくが、地味な映画だからこそ、役者1人1人の演技が映画全体のクオリティを左右することになる。

 

本作の主演であるコリン・ファースと助演のジェフリー・ラッシュの演技はまさに演技合戦そのものであると思うが、片方が良い演技をすればするほど、もう片方の演技も素晴らしくなるという、演技力の正のフィードバックが生じているとも言える。

 

地味な映画なのだが、彼らのリアルな演技によって、いつのまにか観客は映画の世界に引き込まれてしまうのである。

 

重ねて言うが、地味な映画であればあるほど、俳優陣の演技が映画の出来を左右することとなる。本作においてもそれは例外ではなく、ファースとラッシュの演技なくしては、「英国王のスピーチ」はここまで評価されなかったのではないだろうか。

 

3.英国王室の恥部にも触れている

本作は、ジョージ6世の兄であるエドワード8世のスキャンダラスな人間性を描いている点においても興味深い。

エドワード8世は、ジョージ6世の対照的な人間として描かれたと推察するが、あまりにも王には不向きな人間であり、良い印象を抱かなかった。

 

面白いのは、主役であるジョージ6世を立てるためとはいえ、あまり良いイメージではないエドワード8世の退位についても触れている点である。

 

英国の王室と同様に、日本も国家の象徴である天皇制を敷いているが、果たして日本にこのような映画が作れるだろうか?

 

如何に似通った制度を敷いているとはいえ、国の事情でなかなか難しいのだとは思うが、国家の詳細を題材にした映画を、是非日本でも作ってもらいたいと思う。