【紹介×感想】青年と少女の支えあいの物語『ハーフネルソン』
「ラ・ラ・ランド」、「ブレードランナー 2049」のライアン・ゴズリングがアカデミー主演男優賞にノミネートされた作品『ハーフネルソン』。
「ラ・ラ・ランド」の影響で、ゴズリングの知名度が日本でも上がったことにより、アメリカでの劇場公開から11年が経った2017年、日本でようやく公開されることになりました。
今回は、ゴズリングファン必見の『ハーフネルソン」の紹介と感想の記事になります。
※ページ下部の感想にネタバレがあるので注意してください。
基本情報
公開年:2006年(米)
上映時間:106分
ジャンル:ドラマ
監督:ライアン・フレック
脚本:ライアン・フレック、アンナ・ボーデン
音楽:ブロークン・ソシアル・シーン
キャスト:ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エップス、ステファニー・バスト、セバスチャン・ソッツィ、ティナ・ホルムズ、デニス・オヘア、アンソニー・マッキー
概要
ライアン・ゴズリングが心に闇を抱える歴史教師役を繊細に演じ、第79回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた人間ドラマ。ニューヨーク、ブルックリンの中学校で歴史を教えている教師ダンは、型破りな授業で生徒たちから人気を集めている。しかし私生活では、ドラッグ中毒から抜け出せず苦悩する日々を送っていた。ある日、ダンはドラッグを使用しているところを教え子の少女ドレイに見られてしまう。それ以来、ダンとドレイの間には不思議な友情が芽生えはじめる。共演に「愛する人」のシャリーカ・エップス、「キャプテン・アメリカ」シリーズのアンソニー・マッキー。監督は「ワイルド・ギャンブル」のライアン・フレック。「彩プロ30周年記念特集上映」(新宿K's cinema)にて日本初上映。
予告編
ノリスケの評価
全体:★★★★☆
脚本:★★★★☆
映像技術:★★★☆☆
音楽:★★☆☆☆
演出:★★★☆☆
編集:★★★☆☆
一言で言うとどんな映画なの?
わかりやすく述べるならば、「人生を踏み外しそうになっている青年と少女の支えあいの物語」を描いた映画であると言えるでしょう。
主人公が教師であり、教え子である少女と触れ合っていくという内容から、GTOのような教師モノを連想する方がいるかもしれませんが、本作はいわゆる学園系の映画ではありません。本作の中心人物は教師と教え子ですが、両者の間はもっと多様な関係性で成り立っています。(詳しくは後述します)
どういう人にオススメか?
自分の人生の行く末に悩んでいる方、悪い趣味からなかなか抜け出せない方が共感できる映画だと思います。
どんなところが高評価?
主演俳優の繊細で自然な演技
本作の演技により、主演のライアン・ゴズリングは第79回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされました。
本作での彼の演技は、ノミネートされて当然と思わせる素晴らしいものです。
彼が演じた主人公のダンは、ブルックリンの中学校で歴史の教師をしています。テキストを使わずに、生徒との議論を中心にした授業は生徒に人気があります。その一方で、彼はコカイン中毒者であり、アパートや酒場でコカインを吸う毎日を送っています。
生徒に人気があり、学校で面白い授業を行っている彼が「陽」だとすれば、薬物に溺れている彼は「陰」ということになります。
この「陽」と「陰」を併せ持つ主人公を、ゴズリングは見事に演じ切っています。
大作映画では見られない彼のリアルな演技が必見と言えるでしょう。
さて、ここからは、ネタバレ有の本編の感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
感想
主演男優、主演女優の演技が素晴らしいのはもちろんですが、脚本が非常によくできていて、登場人物のセリフ一つ一つに意味があるように感じました。
1.対立要素で構成される人間関係
主人公のダンは、授業で「人種差別」の歴史を教えているのですが、彼は「相反する二つの主張を持った人々によって争いが起こり、1つの物事が起きる」という、彼独自の対立理論を用いて授業を行っています。
本作の中心人物は、教師のダンと教え子のドレイですが、両者には「教師」と「生徒」以外にも様々な対立要素があります。以下はその例です。
・男性、女性
・大人、子供
・白人、黒人
・薬物中毒者、薬物の売人
ダンの主張している「対立理論」とリンクするように、彼と教え子のドレイには多くの対立要素があることがわかります。
登場人物の主張と人間関係を関連付けさせる手法は非常に興味深いと思います。
また、これら多数の対立要素を持っているからこそ、二人に芽生える奇妙な友情の素晴らしさがいっそう強調されています。
2.ダンは、何故ドレイから距離を置こうとしたのか
教え子のドレイと徐々に仲良くなっていくダンですが、彼が薬物中毒者であることが、二人の友情を不完全なものにしていました。
一方で、ドレイの周囲には、彼女の世話を焼こうとする黒人男性が姿を見せるようになります。
(彼女の服役中の兄が仲良くしていた男のようです。)
ダンは、ドレイの送り迎えをしようとするその男を警戒し、ある日、彼の家に乗り込んで「ドレイに近づかないでくれ」と言い放ちます。しかし、彼はその後相手に言われた一言により、自分が知らず知らずのうちに黒人である相手を差別していたこと、コカイン中毒者である自分の方が、子供にとっては悪影響であることに気が付いたのだと私は思います。
そして、彼はドレイから距離を置き、あくまでも教師として彼女と接するようになります。
3.ラストの解釈
物語の後半、ダンは職場をクビになり、ドラッグに溺れてしまいます。
クビになる直接的な場面はありませんが、彼がドラッグに溺れていることから推測できます。彼自身、完全に薬物に溺れずにいられる理由は「子供たちとの触れ合いがあるから」だと言っていました。自分がまともでいられる唯一の薬である子供たちを奪われた彼は、ドラッグに逃げるしかなかったのでしょう。
そして、ドレイは薬の売人である男にそそのかされ、薬の売買の手助けをしてしまいます。そしてついに、ダンがドレイからコカインを買う日が来てしまうのです。
「使用者」と「売人」という対立構造が構築され、彼らの対立は決定的になるのではと思われましたが、ドレイは「売人」という誘惑を断ち切り、友人としてダンの元を訪れます。
本作は、髭を剃ったダンとドレイが一緒にソファーに座るシーンで幕を閉じます。
ダンは教え子を失ってしまいましたが、ドレイという友人を得ることができました。伸びていた髭を剃ったのは、薬物を絶ち、新たな自分へ変わることを意味しているものを思います。
薬物に溺れそうになっていた男の再生、薬物を売らない選択をした少女の成長で締めくくる、希望のあるラストであったと言えるでしょう。
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