【感想】フィラデルフィア(Philadelphia)
エイズによる不当解雇と闘う人々を描いたアメリカ映画「フィラデルフィア」を観ました。トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンの共演ということで、昔から気になっていた映画なのですが、社会的差別を描いた作品ということもあり、なんとなく疲れそうなので、見るのを避けてきました。今回、またもHuluで映画を探していたら、トム・ハンクス主演作がいろいろと追加されていたので、勢いで見てしまいました。
~あらすじ~
フィラデルフィアの弁護士事務所に勤務するアンドリュー・ベケット(トム・ハンクス)は、上級弁護士を目指す優秀な弁護士。周囲の人々にも優しく接し、事務所や顧客からも信頼を得ている彼だったが、実は同性愛者であり、エイズに侵されているという秘密があった。そんな時、彼は重要な書類を紛失しそうになったということで、事務所から突然解雇されてしまう。仕事のミスではなく、エイズを理由として解雇されたことを確信した彼は、以前法廷で戦った弁護士ジョー・ミラー(デンゼル・ワシントン)に、不当解雇を理由に事務所を訴えることを相談する。
~感想~
題名「フィラデルフィア」の意味するところ
多民族国家であるアメリカ合衆国では、その成立上、人種差別を扱った映画が数多く制作されてきました。例えば、「夜の大捜査線(1967年)」、「アメリカン・ヒストリーX(1998年)」、「フルートベール駅で(2013年)」などが挙げられます。「フィラデルフィア」はエイズを扱った映画ですが、エイズの恐ろしさを伝えるというよりは、人種差別と同様に不当な差別との戦いや自由の獲得を描いた作品だと思います。それは、タイトルの「フィラデルフィア」からも伝わってきます。
そもそも、この映画のタイトルは何故「フィラデルフィア」なのでしょうか。最も安易な考えに飛びつけば、作品の舞台だから・・・?そうであれば、何故フィラデルフィアが作品の舞台なのでしょうか。
フィラデルフィアについて、ネットで少し調べてみました。語源は「兄弟愛」を意味するギリシア語であり、かつて独立宣言の起草が行われた都市であることがわかりました。フィラデルフィアの成り立ちには、人間に対して分け隔てない愛情をもつことと、人間は誰からも縛られず自由であることが関わっていたのです。映画の中にも、「人間はみな平等である」というフレーズが登場します。これらのことから、フィラデルフィアというタイトルが自由や平等について描いた本作に選ばれたことがわかります。
平等であること、自由であること
エイズに侵される主人公ベケットは同性愛者であり、本作には数多くの同性愛者が登場します。ベケットの家族のように、同性愛者に理解ある人もいれば、「ホモは嫌いだ!」と堂々と言ってのける人も登場します。事実、ミラーも同性愛者を嫌っています。ここで注意したいのは、本作は同性愛者を嫌う人を批判する映画ではないということです。
裁判の冒頭、ミラーは陪審員に向かってこう話します。「ベゲット氏の所属していた事務所は、彼がエイズに感染していることに気づき、彼を解雇することにしました。私たちが、エイズの人々を遠ざけるように。その気持ちは私にも理解できます。皆さんがこの行為について道義的、道徳的にどう判断しようとそれは自由です。しかし、彼らは法律を違反した。私はこの点を証明します。」
このセリフからも読み取れるように、本作はあくまで病気による不当解雇について法廷という場でどのように証明するかについて重きを置いており、人々が同性愛者やエイズ患者に対してどのような感情を抱いてもそれは当人の自由であると言っています。他人に対してどのような感情を持とうが、それも一つの自由であることに変わりはありません。重要なことは、その感情によって法律が破られ、人々が不当な差別を受けることがあってはならないということではないでしょうか。
~関連商品~
同じくエイズを扱った作品。主演のマシュー・マコノヒー、助演のジャレット・レトがアカデミー賞を受賞。
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