【感想】英国王のスピーチ
数多くの映画を観ていると、ド派手な大作映画よりも、地味で静かな映画を好む時期が度々やってくる。
そんな時期にぴったりの映画が、この「英国王のスピーチ」だ。第83回アカデミー賞で作品賞を含む4つの賞を受賞したことで有名な作品である。
今日は、この「英国王のスピーチ」の感想記事をつらつらと書いていきたい。
1.最初の印象は地味な映画
私が本作を観るのはこれが2度目になるのだが、初めて観たときの感想は、評判よりもずっと地味な映画だな、というものだった。イギリス国王ジョージ6世が吃音症を克服する映画、と聞いていたので、ジョージ6世がどのようにして吃音症を克服するのか、その方法や過程に迫った映画であると思っていたからだ。
しかし、蓋を開けてみると、この映画はジョージ6世が吃音症を克服する過程を描いた映画というよりも、彼がどのような人間で、どのようにして国王になり、何に悩んでいたのかを、彼の人間性を深く掘り下げつつ描いた映画だった。
そのため、ストーリー自体は実に淡々と進み、ドラマティックな展開もあまり観られない。ラストは第二次世界大戦勃発後のスピーチなのだが、ラジオ放送用の小部屋からスピーチを行うため、絵的には実に地味である。
だが、地味だからと言って、本作は決して退屈な映画にはなっていない。
2.演技合戦映画とはこのこと
1人の歴史上の人物を掘り下げるにあたり、重要になってくるのは彼の置かれていた環境を上手く視聴側に伝えることである。
つまり、本作を成功させるために最も重要な点は、吃音症に悩む主人公を如何にリアルに演じ彼の内面や置かれている環境を観客に伝えるか、ということだったと思う。
コリン・ファースは非の打ち所がない演技を見せ、国王としての自信が持てない主人公を実にリアルに演じている。
一方、ローグ言語聴覚士を演じたジェフリー・ラッシュの演技も素晴らしく、彼の巧みな演技によって、神経質でなかなか心を開かないジョージ6世の人間性がより強調されている。
本作は実に淡々とストーリーが進んでいくが、地味な映画だからこそ、役者1人1人の演技が映画全体のクオリティを左右することになる。
本作の主演であるコリン・ファースと助演のジェフリー・ラッシュの演技はまさに演技合戦そのものであると思うが、片方が良い演技をすればするほど、もう片方の演技も素晴らしくなるという、演技力の正のフィードバックが生じているとも言える。
地味な映画なのだが、彼らのリアルな演技によって、いつのまにか観客は映画の世界に引き込まれてしまうのである。
重ねて言うが、地味な映画であればあるほど、俳優陣の演技が映画の出来を左右することとなる。本作においてもそれは例外ではなく、ファースとラッシュの演技なくしては、「英国王のスピーチ」はここまで評価されなかったのではないだろうか。
3.英国王室の恥部にも触れている
本作は、ジョージ6世の兄であるエドワード8世のスキャンダラスな人間性を描いている点においても興味深い。
エドワード8世は、ジョージ6世の対照的な人間として描かれたと推察するが、あまりにも王には不向きな人間であり、良い印象を抱かなかった。
面白いのは、主役であるジョージ6世を立てるためとはいえ、あまり良いイメージではないエドワード8世の退位についても触れている点である。
英国の王室と同様に、日本も国家の象徴である天皇制を敷いているが、果たして日本にこのような映画が作れるだろうか?
如何に似通った制度を敷いているとはいえ、国の事情でなかなか難しいのだとは思うが、国家の詳細を題材にした映画を、是非日本でも作ってもらいたいと思う。
【紹介×感想】コリン・ファースの名演が光る!『シングルマン』
こんにちは、ノリスケです。
前回の映画紹介記事『キングスマン』に続き、コリン・ファースの主演映画を紹介します。今回紹介する映画は、コリン・ファースが英国アカデミー賞の主演男優賞を受賞した『シングルマン』です。
ファースが演じるのは、最良のパートナーを失って人生の意味を見失い、自殺を図ろうとするゲイの大学教授です。
『キングスマン』のハリー役で、彼が最もハマる「英国紳士」というイメージは多くの人に定着することになりましたが、この『シングルマン』でも彼は見事な「紳士」を演じています。
ファースの繊細な演技をこれでもかと言うほど見せつけられる作品になっているので、ファースに興味を持ち始めた方には、是非お勧めしたい作品になっています。
※ページ下部の感想にネタバレがあるので注意してください。
基本情報
公開年:2009年
上映時間:99分
ジャンル:ドラマ
監督:トム・フォード
キャスト:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、マシュー・グッド、他
概要
世界的ファッション・デザイナーとして活躍するトム・フォードが長編映画初監督に挑んだ話題作。1964年に発表されたクリストファー・イシャーウッドの同名小説を原作に、長年のパートナーを亡くした50代のゲイのイギリス人大学教授の愛と葛藤を描き出す。「ブリジット・ジョーンズの日記」のコリン・ファースが主人公を繊細に演じ、ベネチア国際映画祭で主演男優賞を獲得。共演にジュリアン・ムーア、マシュー・グードほか。
予告編
ノリスケの評価
100点満点中 90点
全体:★★★★☆
脚本:★★★★☆
映像技術:★★★★☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★★★☆
一言で言うとどんな映画なの?
交通事故で最愛のパートナーを失い、孤独感に苛まれる主人公の自殺決行日の一日をスタイリッシュな映像で表現した作品です。
主人公の孤独を表現するように、主人公が一人のシーンでは画面全体に白黒を基調としたテクスチャーがかかり、陰鬱でクールな映像に仕上がっています。一方で、誰かと会話し、主人公のテンションがやや上がっているシーンでは、画面全体が明るくなり、主人公の心が(一時であれ)明るくなっていることが表現されています。
主人公はゲイなのですが、同性愛を描いた恋愛映画ではなく、「最愛の人を失ったとき、人は何のために生きるのか」をテーマにした大人向けのドラマ映画です。
どういう人にオススメか?
人生における普遍的な問いをテーマにしているので、万人にお勧めできる映画だと思いますが、娯楽映画ではありませんので、友人や恋人と鑑賞するよりも、休日の午後や金曜日の夜に一人で見たほうが良い映画だと言えるでしょう。
特にも、長年連れ添った夫、妻がいる方には、より共感できる内容になっていると思います。
派手さではなく、静かな映像と余韻を楽しむ映画になっているので、極力周りの音をシャットアウトして、静かに一人で鑑賞することをお勧めします。
さて、ここからは、ネタバレ有の本編の感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
感想
衣装、車、家、家具、小物に至るまで、デザインに統一感があり、非常にクールな映像に仕上がっています。特に、主人公ジョージの衣装、家、車がスタイリッシュに決まっていて、実に素晴らしい。無機質にも見える映像がジョージの孤独感を一層際立たせていると感じました。
コリン・ファースの演技に脱帽
今作において、コリン・ファースが演じた主人公ジョージは、非常に難しい役柄であったと思います。
今日にでも自殺したいというマイナスの感情と、教え子のケニーに少しずつ惹かれていくというプラスの感情を、 相反しながらも実に繊細に演じていたように感じました。
劇中のジョージの言動から、16年連れ添ったパートナーであるジムが如何に大切な存在であり、何物にも代えがたい恋人だったことが伝わってきます。
彼自身、人にとっての幸せとは心から通じることのできる人間と一緒の時間を過ごすことと発言しており、ジムのいなくなってしまった生活が如何に不幸であり、生きる目的がないのだということを強調しています。
しかしその一方で、彼はカルロスやケニーとの会話に小さな喜びを感じ、彼らと仲良くなりたい、もっと色々な話をしたい、という願望をちらりとのぞかせます。
ファースは、このプラスの感情をちらりと覗かせる部分を実によく演じていて、一見するとクールな英国紳士でありながら、とてつもなく寂しい思いをしている孤独な中年男性の複雑な感情を巧みに表現していました。
アカデミー賞主演男優賞ノミネートも納得の演技です。
ラストの解釈
本作は、自殺を思いとどまった主人公が心臓発作によって死んでしまうというラストで幕を閉じます。
一見すると悲劇的なラストに見えますが、私はジョージを可哀想には思いませんでした。主な理由はいくつか思い浮かびますが、大きな理由は、彼自身が死を不幸なものとと考えていなかったことです。
ジョージとケニーの会話シーンでも触れられていますが、ジョージにとって死とは人間誰もがいつかは到達するものであり、それがいつ起きるかだけが問題なのです。
ジョージにとって最大の不幸は、かけがえのないパートナーであるジムを失ったことであり、彼なしの人生に意義を見出せなくなっていたことでした。
しかし、彼のその考えは、教え子であるケニーとの触れ合いによって徐々に変わっていきます。最終的に、ケニーがジョージの心を見透かしたように、拳銃をこっそりと隠し持っていたことから、ジョージは自殺を諦めます。
彼自身、ジムのいない人生に何の意味もないと思っていたのですが、ケニーとの触れ合いの中にひと時の幸せを感じ、非常に瞬間的なその幸せを目的として生きていくことも悪くないと考えを改めるのです。
彼はラストで死んでしまいますが、現在の生活の中に幸せを見出した彼の最後は決して悲劇的ではなかったと私は感じています。
ただ、どうしても、何も殺すことはないんじゃないかという意見もあると思います。
ここからは、私の想像ですが、監督のトム・フォードは、ジョージとケニーが恋人同士になる未来を観客に想像させたくなかったのではないかと思います。
ラストでジョージが亡くならないとすると、視聴側は嫌でもジョージとケニーが仲良くなっていく未来を想像してしまいます。根拠もなく漠然とした考えなのですが、ジョージの死によって、ジョージとジムの関係を永遠のものにしたかったのではと思いました。
まとめ
色々な映画を観ていると、派手な超大作ではなく、静かに余韻を楽しむタイプの映画を見たいと思う時期が高頻度で訪れるようになります。
今回の『シングルマン』は、まさにそのようなタイプの映画に合致する内容であると言えるでしょう。
「人生における幸せとは何か?」
普遍的な問いですが、このような問いを映画を通じて考えられるということは、とても幸せなことなのかもしれません。
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【紹介×感想】スパイアクション映画の傑作『キングスマン』
こんにちは、ノリスケです。
今回紹介する映画は、2015年に世界中で大ヒットしたイギリス発のスパイアクション映画『キングスマン』です。
主役のコリン・ファースが放つキレキレのアクションが大いに話題となりました。
原作は、『キックアス』の原作者として知られるマーク・ミラー。同じく『キックアス』の監督であるマシュー・ヴォーンが監督を務めました。
映画界でかなり話題になっていたのですが、何故か見る機会がなく。。。(汗)
続編である『キングスマン・ゴールデンサークル』が公開されたこともあり、やっとのことで見てみました。
結論から言ってしまうと、ここまで面白いスパイ映画は本当に久しぶりだと思いました。公開当時、大ヒットしたことも当然だと思います。
まだ見たことがない方には、是非是非見ていただきたい映画になっていますので、簡単に映画の紹介をしていきますね。
※ページ下部の感想にネタバレがあるので注意してください。
基本情報
公開年:2015年
上映時間:129分
ジャンル:アクション
監督:マシュー・ヴォーン
キャスト:コリン・ファース、サミュエル・L・ジャクソン、マーク・ストロング、タロン・エガートン、マイケル・ケイン、他
概要
「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を受賞したコリン・ファース主演、「キック・アス」のマシュー・ボーン監督&マーク・ミラー原作によるスパイアクション。表向きは高級スーツ店だが実は世界最強のスパイ組織「キングスマン」で活躍する主人公ハリー・ハートをファースが演じ、ハリーに教えをこう若きスパイのエグジーに、新星タロン・エガートンが扮する。その他、マイケル・ケイン、マーク・ストロング、サミュエル・L・ジャクソンらが共演。ブリティッシュスーツを華麗に着こなし、スパイ組織「キングスマン」の一員として活動しているハリー。ある日、組織の一員が何者かに殺されてしまい、その代わりに新人をスカウトすることになる。ハリーは、かつて命を助けてもらった恩人の息子で、密かにその成長を見守っていたエグジーをキングスマンの候補生に抜擢する。一方その頃、頻発する科学者の失踪事件の首謀者ヴァレンタインが、前代未聞の人類抹殺計画を企てていた。
予告編
ノリスケの評価
100点満点中 95点
全体:★★★★★
脚本:★★★★☆
映像技術:★★★★☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★★★☆
一言で言うとどんな映画なの?
スパイの父親を持つ労働者階級の若者がスパイとして成長していく物語と、彼の師匠にあたるベテランスパイの戦いが描かれます。
007シリーズやMIシリーズ、ボーンシリーズなどで知られるスパイ映画の一つなのですが、若者の成長を描いている点、労働者階級と資本家階級の戦いを描いている点が新しいと思いました。
また、公開当時話題になったアクションシーン、これが特に素晴らしいです。
主役のハリーを演じるコリン・ファースは、これが映画キャリア初のアクションだったということですが、彼の戦闘シーンが圧巻の一言に尽きます。
ストーリーを度外視しても、彼のアクションシーンだけで見る価値が十分ある映画です。
どういう人にオススメか?
他のスパイ映画同様、本作も娯楽映画の一つに数えられますので、アクション映画に限らず、大作の映画を観たい、ハラハラドキドキの映画を観たい、という方にお勧めの作品になります。
ただし、本作には、残虐描写、グロテスクな描写が多少(?)含まれていますので、そういうものに耐性がない方は少し覚悟が必要です。
それでも、老若男女問わず楽しむことができる娯楽映画の範疇を超えることはありませんので、友人や恋人との鑑賞にもおすすめです。
さて、ここからは、ネタバレ有の本編の感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
感想
脚本、アクション、テーマのバランスが非常によく、見てよかったと思えるアクション映画に仕上がっていると感じました。
エグジーの成長とハリーの戦いを交互に描いている点が良い
面白い映画と言うのは、観客を全く飽きさせることなく、クライマックスまで到達します。本作は、実質の主役であるエグジーの成長譚と存在感溢れるハリーの戦いを交互に描くことにより、ストーリーにメリハリを持たせることに成功していると思います。
主役のエグジーは、スパイとしての才能を垣間見せつつも、精神的、技術的にはまだまだ未熟であることが、キングスマン承認試験で描かれていきます。
その一方、ハリーはと言うと、熟練した技術で敵に近づいていきます。
未熟な若者とベテランのスパイを対比させることにより、両者のキャラクターがより際立ち、双方がより魅力的になっていると感じました。
アクションシーンのカメラワークが凄い
今作の最も大きな特徴をあげるとすれば、やはりアクションシーン、ということになります。
どこが凄いのかと言うと、戦闘シーンのカメラワーク(演出)だと思いました。
特筆すべきは教会での戦闘シーンで、あたかもノンカットのように、流れるように繰り出される攻撃の嵐。
見ていて実に爽快で、例えば格闘ゲームなどで上手くコンボが決まった時と同様の快感を、本作のアクションシーンから感じることができました。
さらに、スーツを着こなした英国紳士が、キレキレのアクションをするっていうことが良いギャップになっており、アクションの魅力を引き立てる材料になっています。
一貫したテーマがある
如何に娯楽作品といえども、作品全体に一貫したテーマがあると、ストーリーそのものの重みが全く違ってきます。
本作はというと、労働者階級と資本家階級の対立が主たるテーマになっていると思いました。
(資本家階級を馬鹿にしていると言ってもよいシーンもあります。)
労働者階級、資本家階級に触れるシーンは本作に多く含まれているのですが、例えば以下のようなシーンが該当します。
・エグジーは労働者階級の生まれであり、そのことにコンプレックスを持っている。
・ハリーはエグジーに対し、「人の人生は生まれた環境では決まらない。努力次第でどんな人間にもなれる。」と説明する。
・ランスロットの候補者である資本家階級の連中(所謂おぼっちゃま)がどれも感じの悪い性格である。
・マイケル・ケイン演じるアーサーは、資本家階級の人間こそがキングスマンに相応しいと考えている。
・ヴァレンタインは、世界中の政治家、資本家を操るため、彼らに爆薬を埋め込むが、反対にエグジーに利用され、政治家たちを皆殺しにされる。
(政治家たち、金持ち集団の頭が爆発するシーンが、実に皮肉めいていて非常によい!)
これらのシーンから、如何に本作が資本家たちをコケにしているかがわかります。
この映画が大多数の人々に支持された理由は、おそらくこのテーマ性に関係するのだと思います。
大多数の人間は、資本家階級ではなく労働者階級の人間になりますので、当然、貧乏人が成功し、金持ちが失敗するストーリーに好感を持ってしまいますよね。
(少なくとも、私は労働者階級の人間なのでそう思いました。)
「人の人生は生まれた環境では決まらない。」というハリーの言葉は、現実的には厳しいものがあると思いますが、多くの人々に希望と夢を与えるアクション映画のテーマの根幹をなすセリフとして、非常に意味のあるものだと思いました。
まとめ
冒頭にも書きましたが、ここまで面白いスパイ映画を観たのは本当に久しぶりでした。続編である『キングスマン・ゴールデンサークル』にも期待しかないのですが、二作目は一作目よりも劣るのが通例なので、そういう意味では、少し不安もあります。
『ゴールデンサークル』の紹介・感想記事は、後日アップしたいと思いますので、また後程、よろしくお願いします。
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【紹介×感想】ゾンビ映画の原点『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
こんにちは、ノリスケです。
今回紹介する映画は、ゾンビ映画の古典的名作である『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』です。
ゾンビ映画の生みの親であるジョージ・A・ロメロ監督の作品で、本作と『ゾンビ』、『死霊のえじき』を合わせた三作が「ロメロのゾンビ映画三部作」と呼ばれています、
ゾンビ映画好きならば必ず見ておくべき名作中の名作なのですが、白黒映画と言うこともあり、なかなか手が出ず、今日まで未見のままでした・・・。
やっとのことで観ましたが、名作と言われるだけあって、やっぱり面白いですねぇ~。
ざっくりとですが、本作の紹介と感想を書いていきたいと思います。
※ページ下部の感想にネタバレがあるので注意してください。
基本情報
製作年:1968年
上映時間:96分
ジャンル:ホラー
監督:ジョージ・A・ロメロ
キャスト:デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オディア、カール・ハードマン、マリリン・イーストマン、キース・ウェイン
概要
墓参りにやってきた兄妹ジョージとバーバラ。そんなふたりに、甦った死体が襲いかかる。ジョージは格闘の末に死亡し、近くの家に逃げ込んだバーバラは他の避難者たちと合流する。しかし一行は死者の襲撃を前にしながら対立。ゾンビの群れは容赦なく押し寄せてくるが……。緩慢な動きながら、生者を襲うことで限りなく増殖し続け、脳を破壊しない限り滅びないゾンビ、そしてその襲撃に立ち向かう人々を描いたホラーシリーズ第1作。製作時の社会・世相を反映した物語はそのたびに恐怖と衝撃を呼んでいる。
予告編
【ゾンビ】ナイトオブザリビングデッド Night of the Living Dead 【ロメロ】
ノリスケの評価
100点満点中 80点
全体:★★★★☆
脚本:★★★★☆
映像技術:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★☆☆☆
一言で言うとどんな映画なの?
蘇った死体(リビングデッド)から逃れるために、一軒家に立てこもった人々。密室における人間同士の対立をストーリーの主軸にし、リビングデッドとの攻防を描いた映画になります。
ある日、兄妹のジョージとバーバラは父親の墓参りのために墓所を訪れます。墓所にはもう一人男性がいて、彼らはてっきり墓参りに来ている人だと勘違いするのですが、実は墓場から蘇ったリビングデッドが歩き出していたのです。
妹のバーバラは、近くの民家に逃げ込むことに成功します。
彼女と同様に、何人かの人間が民家に避難してくるのですが、リビングデッドへの対処法を巡り、避難者同士が対立を始めます。
民家に迫りくるリビングデッドも怖いのですが、密室で一触即発状態になっている人間同士の方がもっと怖い。そんな印象を抱かせる映画になっています。
どういう人にオススメか?
言わずもがな、ゾンビ映画大好き!ホラー映画大好き!という方にはお勧めできる(と言うか、見ておくべき)映画でしょう。
反対に、グロ系が苦手な方は避けたほうが良い映画だと思います。
モノクロ映画なので、血の描写はハードではありませんが、人体破壊、カニバリズムなどの要素が多めになっているからです。
そして、モノクロ映画と言うことで、自分も視聴を敬遠していたのですが、実際に見てみるとそんなことは全く気になりません。
むしろ、モノクロの方が陰影がはっきりと出ていて、妙にリアルというか、本物っぽいというか、良い意味でわざとらしくない映像に仕上がっているような気がしました。
さて、ここからは、ネタバレ有の本編の感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
感想
中盤からの盛り上がりが凄まじい
物語の序盤は退屈に感じましたが、中盤~終盤にかけての盛り上がりが良いですね。
特に、一軒家に隠れた避難者同士の対立が明確になる中盤以降は、対ゾンビの恐怖に併せて対人間の不信感がプラスされ、見るものの不安感をより一層駆り立てます。
ゾンビ映画と言えば、人間同士の対立が定番中の定番なのですが、その要素は古典作品である本作で既に取り入れられていたことがわかります。
現代のゾンビ映画との違い
意外だったことは、死者たちが思いのほか弱かったことです。
力のある大人であれば、格闘をして倒すこともできますし、歩く速度が遅いため、銃を使えば簡単に殺すことができます。
その一方、死者たちの不気味さは現代ゾンビ映画に比べて本作の方が勝っているように思いました。
特筆すべきは、カニバリズム(人食行動)、肉体破壊描写の多さです。
死者たちは、腕が取れていたり、脳みそが飛び出していたりして、体のどこかしかが破損しています。
そして、人間を殺し、その身体を食べようとします。
このような描写は、現代のゾンビ映画には見られません。
現代のゾンビ映画におけるゾンビが、何らかの菌によって人間が変貌した存在である「感染者」であるのに対して、本作におけるリビングデッドは、あくまで「動き出した死体」であることが、現代のゾンビ映画と本作の大きな違いであると言えるでしょう。
緊迫する一方で、緩さもある
ゾンビ映画と言えば、緊迫した状況である一方で、どこか緩いテンションが
介入してくるのが定番です。
本作では、一軒家に立てこもった人々の緊迫した状況が描かれる一方で、死者たちを討伐する人々の楽しげにも見える風景が映し出されます。
死者が蘇って動き出すという「非日常」の物語の中に、緩くも見える人々の対応を重ね合わせることによって、非日常を限りなくリアルに見せることに成功しているのだと思います。
(映画全体がドキュメンタリータッチになっていることも、リアルさを際立たせる一因になっていると思います。)
まとめ
ゾンビ映画の元祖だからと言って、面白いとは限らないと思っていたのですが、ゾンビたちの不気味さは現代のゾンビ映画を凌駕していました。
最近のゾンビ映画は、怖いというよりも驚きの要素が強いように思っていたのですが、本作はおどろおどろしく、静かで陰鬱な怖さが際立っています。
ホラー映画好きであれば、真っ先に見るべき映画の一つであると言えるでしょう。
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【紹介×感想】新感覚のSFスリラー『セブン・シスターズ』
こんにちは、ノリスケです。
今回紹介する映画は、ノオミ・ラパス主演のSFスリラー『セブン・シスターズ』です。
ノオミ・ラパスが七つ子の姉妹を演じる(1人7役)ことが話題になりました。
それぞれが違った個性を持っていながらも、家の外では一人の人間を演じている7人姉妹。しかし、ある日姉妹の一人が行方不明になり、姉妹の日常が壊れ始めます。
設定から面白そうな匂いがぷんぷんする映画なのですが、果たしてその実力はいかほどなのでしょうか。
※ページ下部の感想にネタバレがあるので注意してください。
基本情報
製作年:2016年
上映時間:123分
ジャンル:サスペンス
監督:トミー・ウィルコラ
キャスト:ノオミ・ラパス、グレン・クローズ、ウィレム・デフォー、マーワン・ケンザリ、クリスティアン・ルーベク、ポール・スベーレ・ハーゲン
概要
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」「プロメテウス」のノオミ・ラパスが、7つ子の姉妹を1人7役で演じたSFスリラー。2073年、繰り返される戦争や難民問題で主要国は滅び、「ヨーロッパ連邦」が新たな超大国として君臨していた。人口過多と食糧不足から政府は厳格な一人っ子政策を発令し、2人目以降の子どもは親元から引きはがされ冷凍保存されてしまう。そんな世界で偶然生まれた7つ子は、週に1日ずつ外出し、共通の人格を演じることで監視の目をくらませてきたが、ある日、7人のうちの1人、マンデー(月曜日)が帰宅しなかったことから、姉妹の日常が次第に狂い始めていく。優等生、ヒッピー、反逆者、天才エンジニア、パーティガールなどバラバラな個性をもちあわせながらも、家の外では1人の銀行員を演じている7人姉妹を、ラパスが1人7役で体現した。「処刑山 デッド卍スノウ」で注目され、「ヘンゼル&グレーテル」でハリウッドデビューを果たしたノルウェー出身のトニー・ウィルコラ監督がメガホンをとった。
予告編
ノリスケの評価
100点満点中 85点
全体:★★★★☆
脚本:★★★★☆
映像技術:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★★★☆
一言で言うとどんな映画なの?
人口増加が進んだ近未来。一人っ子が義務化された社会の中、七つ子であることを隠し、一人の女性「カレン・セットマン」を演じて生きている姉妹が主人公の映画です。
彼らの名前は月~日の曜日であり、自分の名前の曜日の日だけ、外に出ることができます。
また、それぞれが一人の人物(カレン)を演じるため、外出中に起こった出来事(仕事を含め)を全て7人が共有しています。現代よりも技術が進んでおり、7人は夕飯時に1日のカレンの主観的映像を観ながら情報を共有しています。
Mondayが月曜日に行った仕事内容を全員が確認し、Tuesdayが火曜日にその続きを行う、というように、毎日仕事の引継ぎを行っているような感じですね。
また、7人はそれぞれ長所・短所があり、様々な個性があります。
例えば、Wednesdayは格闘好きで筋トレばかりしているのですが、Fridayはオタク家のあるプログラマーといった感じで、理数系を得意としています。
様々な個性をもつ7人が1人の女性を演じることは大変なことでもあるのですが、その一方で1人(7人)が様々な能力を有しているため、カレン・セットマンは銀行員として出世していきます。
しかし、姉妹の一人であるMondayが突如行方不明になってしまったことにより、彼女たちの日常は崩壊していくのです。
どういう人にオススメか?
本作は、ある特定の設定を扱ったSF映画の一つと言えます。
例えば、アンドリュー・ニコル監督の『ガタカ』、『タイム』 などに近い種類の映画であると言えるでしょう。
上記のようなSF映画が好きな方にはもちろん、上質なサスペンス映画を好む方におススメできる作品です。
『ガタカ』ほどではありませんが、絶対に見て損はないSF作品になっているので、まだ見たことがない方は、是非一度見てみてください!
さて、ここからは、ネタバレ有の本編の感想になりますので、未視聴の方はご注意ください。
感想
この手のSF映画は、設定が面白くても肝心のストーリーがスカスカだったりするのですが、本作は脚本が良かったと思います。
7人姉妹という設定を上手く活かしている
本作は7人姉妹全てが主人公という設定を生かし、「主人公は最後まで死なない」という映画のお約束を壊すことに成功しています。
ネタバレをしますが、本作では主人公の7人姉妹が次々と脱落していきます。
まず、主人公の一人であるMondayが行方不明になるのですが、あくる日、今度はTuesdayが児童分配局にあっさりと捕まってしまいます。そして、ついに児童分配局が彼女たちの自宅にやってきて、激しい戦いの結果、Sundayが死んでしまいます。
7人姉妹という設定を生かし、言葉が悪いですが、脚本上で主人公を捨て駒にすることを可能にしているところが面白いと思いました。
次は一体誰が犠牲になるのか?最後まで生き残るのは誰なのか?というところで、非常にハラハラドキドキさせられます(笑)。
それと、児童分配局相手にかなり奮闘したWednesdayをあっさり殺すあたりに、脚本家がこの設定を上手く使い倒そうとしている意図が見て取れます。
普通の映画であれば、あれだけの修羅場を潜り抜けたキャラクターを殺すことはしないでしょう。
ただし、この映画ではそれができます。なぜなら、彼女の遺志を継ぐ主人公が他にも残っているからです。
Wednesdayみたいにあっさり主人公が死んでしまうと、見ている側は平然としていられません。本当に、主人公の誰が死んでもおかしくない状況に追い込まれるからです。
一部、脚本に欠点もある
ただし、本作の欠点を一つ上げるとすれば、それは姉妹それぞれの担当曜日に死や失踪が集中していることです。
外出した一人が狙われるのは当然なことなのですが、外出した姉妹が次々に消えるか死んでしまうため、「外出者=死ぬ」という予想が自然に膨らんでしまいます。
ただし、この欠点があまり気にならないくらい、本作そのものの脚本が素晴らしいと思います。
謎のバランスがちょうどよい
7人姉妹であることが何故かバレてしまったことにより、彼女たちの日常は急速に壊れていきます。「何故7人姉妹であることがバレたのか?」が本作の主題であり、その答えによって、一連の事件の犯人が明らかになります。
この手のストーリー全体に共通する謎は、難しすぎると視聴側が考えることを放棄してしまい、簡単すぎると物語に緊張感をなくしてしまいます。
本作は、この主たる謎の難しさのバランスがちょうど良いなと思いました。
例えば、謎に対するヒントはストーリー序盤の彼女たちの幼少期に散りばめられています。ちょっと考えれば、解けてしまえそうな謎なのですが、物語全体にスピード感があるため、視聴側はあまり考える余裕がなく、進行中のストーリーに引きずり込まれていきます。
謎への回答を少し醸し出しつつも、緊張感ある場面を次々と展開していく。まさにサスペンスのお手本のような脚本だと思いました。
まとめ
近未来社会を舞台にした映画には、当たり外れが多いため、正直あまり期待していなかった部分がありました。
しかし、蓋を開けてみたら、なかなかに面白い映画でしたね~。
近年のサスペンス映画のトップ5に入ります。
やっぱり、「主人公をあっさり殺す」ところが特に良いですね。他の映画では絶対にできないことなので、製作側も楽しかったのではないでしょうか(笑)
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セブン・シスターズ WHAT HAPPENED TO MONDAY?
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【感想】(ネタバレ多数有)『スターウォーズ 最後のジェダイ』
こんにちは、ノリスケです。
前回の記事に引き続き、今回は『スターウォーズ 最後のジェダイ』についての記事になります。
今回は、ネタバレ全開、批評全開の感想記事になりますので、未視聴の方はブラウザバックをお願いします!
『スターウォーズ 最後のジェダイ』の見所が気になる方は、以下の記事をご参照ください。
公開初日に、コスプレをして劇場に行くほどではないですが、私はスターウォーズシリーズのファンであると自信を持って言えます。
ファンの一人である私から見て、本作はスターウォーズシリーズの一作品としてどれほど評価できるものなのか?また、そもそも一つの映画作品としてはどの程度のものなのか?これらの疑問を柱として、感想を書いていきたいと思います。
ノリスケの評価
100点満点中 70点
全体:★★★☆☆
脚本:★★☆☆☆
映像技術:★★★★☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
編集:★★★☆☆
何度も見たいと思うか:思う
感想
前作『フォースの覚醒』から2年が経過して公開される新作ということで、かなり期待して劇場に向かいましたが、観終わった後の率直な感想は、『期待を超えてこなかった平凡な作品かなぁ』というものでした。
はっきり言って、ローグワンの方がめちゃめちゃ面白いです。
2時間半という長軸作品にも関わらず、物語のスケールが徐々に小さくなってきている点や、2作目恒例のサプライズがあると思いきや、何だかよくわからなかったところなど、ネガティブな理由をあげればキリがないのですが、一ファンの視点から見て、本作は前作の『フォースの覚醒』よりも増してスターウォーズらしくない作品になってきているということが最も大きなマイナス点かと思います。
ここからは、皆さんがスターウォーズシリーズを全て観ているという前提で話を進めていきますので、ご注意ください。
もはやスカイウォーカー家にまつわるストーリーではなくなっている
本作において、主人公レイの出自が明らかになりました。
レイは幼少時から惑星ジャク―で一人で暮らしており、彼女の両親については謎に包まれていました。しかし、カイロ・レンの口から、彼女の両親の真実が明かされました。
- 彼女の両親は、シリーズの主要人物に関係する人物ではない。
- 金欲しさのために彼女を売った。
- 既に死んでしまっており、ジャク―の共同墓地に埋葬されている。
この真実によって、レイは、これまで登場してきた主要キャラクターとは全く関係のない、赤の他人から生まれた女性であることがはっきりとしました。
この事実が明らかになったとき、皆さんはどう感じましたか?
はっきり言って、私はあまりにも何でもない真実に拍子抜けしました。
あれだけ、ルークの隠し子説、レイアの隠し子説とか色々想像させておきながら、結局はこれまでのシリーズとは全く縁のないキャラクターというところに着地したわけですから。
この真実によって、ナンバリングタイトルで初めて、スカイウォーカー性ではない人物が主人公になったことが確実となりました。
私のような昔からのスターウォーズファンにとっては、スターウォーズとはスカイウォーカー家の物語であるという認識が強く存在しています。
- エピソード1~3:アナキン・スカイウォーカーの物語
- エピソード4~6:ルーク・スカイウォーカーの物語
このため、エピソード7~9についても、ルークの子孫またはレイアの子孫の物語であるという想像が強く働いていました。
しかし、実際に明らかになったのは、スカイウォーカー家とは縁もゆかりもない新主人公の登場。
そして、本作のラストにおいて、ルークは他界し、魂だけの存在になってしまいます。
これらの展開によって、私のなかで「スカイウォーカー家が不在のスターウォーズはスターウォーズとは言えない」という感情が否が応でも芽生えてしまいました…。
ファン特有の偏った意見かもしれませんが、やはりスカイウォーカー家中心の展開を期待していたのが正直な気持ちです。
旧シリーズと同じことをやりすぎ
前作『フォースの覚醒』を観た時にも思ったのですが、旧シリーズのリスペクトやオマージュといいながら、あまりにも同じことをやりすぎではないですか?
例えば、『フォースの覚醒』の終盤の展開は、エピソード4のデス・スター破壊作戦と大差ない内容ですよね?
本作でも、「どこかで見たような…。」という描写が時折見られます。
(真っ白な塩の惑星での戦闘も、エピソード5のオマージュですよね?個人的には、スピーダーの走った跡に赤い線が残る演出はよかったと思いますが。)
旧作のリスペクトも大切ではあると思いますが、終盤の戦闘でここまで似せることはむしろマイナスではないでしょうか。
長時間のわりに、小規模な世界にまとまっている
シリーズ最長の上映時間となった本作ですが、その割には、実にこじんまりとした世界にまとまっている気がします。
と言うのも、ほとんどが下記のような閉鎖的な環境のシーンで構成されているからだと思われます。
- レイとルークの交流(孤島でのシーン)
- レジスタンスの逃亡、ポーの反乱(戦艦内のシーン)
- レイとカイロの共闘(戦艦内のシーン)
- フィンとローズ、DJの潜入(戦艦内のシーン)
…戦艦内のシーンが多すぎやしないでしょうか?
新しい惑星が二つ登場しますが、描かれるはその惑星のほんの一部です。
ストーリーの進行に伴い、スケールが小さくなる
本作にネガティブな感想を抱いてしまう理由のひとつに、ストーリーの進行に伴って物語の規模感が小さくなっていくことが挙げられます。
例えば、
が規模感を小さく感じさせる主な原因かと思います。
新共和国の支援を受けながら戦っていたはずのレジスタンスの規模が、本当に小さくなってしまっています。
旧共和国と独立星系連合の戦いである「クローン戦争」よりも、実に小さい規模の戦争ですよね。
前作『フォースの覚醒』を観た時にも感じていたのですが、エピソード4~6の製作から30年以上が経過しているのにも関わらず、物語のスケールがエピソード4~6と全く変わっていません。
あの時と変わらず、小規模の善玉(レジスタンス)と大規模の悪玉(ファースト・オーダー)が小競り合いをしているような印象を受けます。
エピソード4の公開当時に、あれだけの技術を駆使したのは確かに凄いことですが、30年以上経過しても同じような規模の映画を作るなんて、意味があることなのでしょうか?
ぶっちゃけ、30年前でも現在とあまり変わらないクオリティで『フォースの覚醒』、『最後のジェダイ』を製作することができたのではないかと思ってしまいます。
エピソード7~9はファンの需要とは異なるスターウォーズである
私の中では、これまでのスターウォーズシリーズは、ファンの需要(疑問)に答える形で映像作品を世に送り出してきたというイメージがあります。
例えば、下記の事項が挙げられます。
- エピソード1~3:ジェダイ騎士アナキン・スカイウォーカーは、何故暗黒面に落ちてしまったのか
- クローンウォーズ(アニメ):クローン戦争とはどのような戦争だったのか
- 反乱者たち(アニメ):反乱同盟軍がどのように立ち上がったのか
- ローグワン:デススターの設計図はどのようにして入手されたのか
特に、エピソード2と3の間に起こったクローン戦争を描いたアニメ作品「クローンウォーズ」は大変クオリティが高く、シーズン6まで製作されました。
どの映像作品も、ファンならば通常抱くであろう疑問に対し、回答を提示しています。
一方で、エピソード7~9はどうでしょうか?
これまでの映像作品がエピソード4~6の後付け作品であったのに対し、エピソード7~9は全くの新しい世界を描いています。
とは言え、エピソード4~6、1~3の順序を辿ってきたファンの視点から見れば、エピソード7~9についてはおおよそ下記のように想像していたのではないかと思います。あくまで一ファンの意見でしかありませんが。
①ルークがコルサントにニュージェダイ・オーダーを設立し、パダワンの指導を始める
②共和国が復活するが、一部の惑星は共和国を離れ、帝国の残党に支援を開始する
③レジスタンスが結成され、帝国の残党と戦闘を開始
エピソード1~3でジェダイ・オーダーの最盛期を観ている以上、エピソード7~9でオーダーが復活してほしかったというのが、正直な気持ちです。
(私と同じように、オーダーの復活を夢見ていたファンは多いはずです。)
最も期待していたのは「ルークがパダワンたちと共に新たな敵と戦う」という内容だったのですが、実際に公開されたエピソード7~8は私の想像とはかけ離れた内容になっていました。
そのため、『フォースの覚醒』、『最後のジェダイ』をスターウォーズらしくない映画だと感じてしまうのかもしれません。
登場人物に個性がない
全体的にキャラクターが地味と言うか、個性がないですよね。
その最たるキャラが、フィンだと思いますが(笑)
どうしても過去作との比較になってしまうのですが、過去作を超えるほどの個性を持ったキャラクターが、本作には登場しません。
例えば、ダース・シディアスに比べれば、スノークなど小物感が否めませんし、過去のシスに匹敵する悪キャラが存在しません。
レジスタンスも、本当に地味。
ポーも確かにカッコいいですが、劣化版ルークに見えてしまうのが残念です。
エピソード1~3に登場したメイス・ウィンドゥ並みに印象に残るキャラはいないんでしょうか。
まとめ
かなり辛辣な意見を書いてしまいましたが、これが正直な気持ちです。次回作『エピソード9』にもそこまで期待はしていません。
『フォースの覚醒』を観た後には、早く『最後のジェダイ』を観たい!と思ったものですが、『エピソード9』を早く見たいという欲求はありませんね。
ソロがいない、ルークもいない、新キャラが地味であるというスターウォーズに、一体何を期待しろというのでしょうか。
新キャラクターたちが旧キャラクターを超えていない時点で、その映画には魅力がありません。
ソロやルーク、レイアなど、旧3部作のメンバーを退場させるからには、彼らを超えるキャラクターを登場させる必要があるはずです。
『最後のジェダイ』の時点で、残念ながらそれが出来ているとは思えません。
一人のファンとして、エピソード7~9がスターウォーズの黒歴史になってしまわないことを願うばかりです。
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【紹介】『スターウォーズ 最後のジェダイ』
こんにちは、ノリスケです。
2017年12月15日に公開されたスターウォーズエピソード8『最後のジェダイ』。前作の『フォースの覚醒』から2年振りの新作となります。
『フォースの覚醒』で散りばめられた謎が少しずつ明らかになるということで、スターウォーズファンから大いに期待されている本作。
今回は、本作の見所などを紹介したいと思います。
※ネタバレ有の感想記事は別にアップします。
基本情報
公開年:2017年
上映時間:152分
ジャンル:SF、アクション
監督:ライアン・ジョンソン
キャスト:デイジー・リドリー、ジョン・ボヤーガ、アダム・ドライバー、オスカー・アイザック、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ルピタ・ニョンゴ、アンディ・サーキス、ドーナル・グリーソン、アンソニー・ダニエルズ、グウェンドリン・クリスティー、ケリー・マリー・トラン、ローラ・ダーン、ベニチオ・デル・トロ
概要
「スター・ウォーズ」の10年ぶりの新作として大ヒットを記録した「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に続くシリーズ作品で、伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを探し当てた主人公レイがたどる、新たな物語が描かれる。前作で「スター・ウォーズ」の新たな主人公レイに大抜てきされ一躍注目を集めたデイジー・リドリーのほか、ストームトルーパーの脱走兵フィンを演じるジョン・ボヤーガ、ダースベイダーを受け継ぐカイロ・レン役のアダム・ドライバー、そしてルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミル、2016年12月に急逝したレイア・オーガナ役のキャリー・フィッシャーらおなじみのキャストが出演。監督・脚本は「BRICK ブリック」「LOOPER ルーパー」などで頭角を現したライアン・ジョンソンが担当した。 映画.comより
予告編
本作の見所は?
ルーク・スカイウォーカーが本格的に登場
旧3部作で主人公を務めたルーク・スカイウォーカー。マーク・ハミル演じるルークが30年ぶりにスクリーンに帰ってくるということで、前作『フォースの覚醒』で大いに話題になりましたが、『フォースの覚醒』での彼の出番は、ラストのほんの数秒のみで、セリフもありませんでした。
本作『最後のジェダイ』は、『フォースの覚醒』のラストからそのまま続くストーリーになっており、物語の序盤からルークが登場し、本格的にストーリーに関わっていくことになります。
ルークの元を訪れたレイに対し、彼は「ジェダイが滅びる時がきた」と言い放ち、その理由を語り始めます。
新ジェダイ・オーダー設立を志した彼が何故挫折してしまったのか?
かつての弟子カイロ・レンとの間に何があったのか?
どうしてジェダイは滅ぶのか?
本作では、ルークにまつわるこれらの謎が解明されます!
ジェダイマスターとなったルークの熟練された技の数々も必見です。
新主人公レイの正体は?
エピソード7~9の新主人公である、レイ。
『フォースの覚醒』において、カイロ・レンの正体がハンとレイアの息子であるベン・ソロであると早々と明かされた一方で、レイの両親については謎に包まれたままでした。
レイの正体についは、「スカイウォーカー一族と何らかの関係がある」、「実はルークの隠し子では?」などなど、ネット上で様々な説が飛び交っていますが、本作『フォースの覚醒』において、レイの両親が明らかになります。
ファースト・オーダーの最高指導者スノークの正体は?
前作『フォースの覚醒』では、ホログラムによる登場のみだったファースト・オーダーの最高指導者スノーク。彼の正体は謎に包まれたままでしたが、本作では彼が本格的に動き出します。
フォースの暗黒面について詳しい振る舞いをしていることから、シスの生き残りではないかという説もありますが、本当のところはどうなのでしょうか?
レイとカイロ・レンの交流
本作において、レイとカイロ・レンはフォースによってお互いの心を通わせていきます。カイロにとって、レイはライトセーバー戦で敗北した憎むべき相手だったのですが、お互いに意識を通わせることにより、その気持ちに変化が現れます。
カイロ・レンが、レイをダークサイドに誘惑するのか?
レイが、カイロをライトサイドに復帰させるのか?
光と闇のどちらにも傾きうる緊迫した展開は必見です。
その他の見所
その他の主な見どころをざっと挙げてみました。
まとめ
様々な見どころを書き連ねましたが、ファンにとって最も注目する要素は「ルーク・スカイウォーカーの復帰」でしょう。
ファンの誰もが想像したであろうジェダイマスターとなったルークの姿が、本作では充分に描かれます。
彼とレイの交流を通して、「フォースとは本来何のか?」、「ジェダイは銀河系に必要なのか?」といった根源的な問いを考えてみると面白いかもしれません。
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