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漫画、映画、アニメなどについて語っていきます!

【感想】「聲の形」聞こえない少女と聞きたくない少年を描く映画

 ※以下、映画のあらすじ、ネタバレを含みますのでご注意ください。

※個人的な感想を多分に含む駄文であることをご承知おきください。

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2015年版『このマンガがすごい!』オトコ編で第1位に選ばれた漫画「聲の形」。京都アニメーション制作の映画が公開されているということで、近所のシネコンで見てきました。

原作を未読のこともあり、「聾唖の少女のために主人公が頑張る恋愛映画」くらいに考えていたのですが、本当に考え甘かったです(笑)。未見の方には注意していただきたいのですが、本作は、学校内のいじめとスクールカーストの問題を題材にし、他人と上手くコミュニケーションが取れない少年少女を描いた社会派のアニメ映画です。

取り上げている問題が問題なので、非常に重い内容になっていますが、メッセージ性が極めて強い作品ですので、是非若い世代の方々に見てもらい、他人とのコミュニケーションについて考えていただきたい作品です。私自身、映画を観終わってから悶々としてしまい、ここ数日は「聲の形」のことが頭から離れなくなりそうです(個人的に、あまりにも衝撃的すぎる映画を見た後に、数日間映画のことが頭から離れなくなることを映画後遺症と呼んでいます)。

自分の脳内では消化しきれないので、この場を使って感想を文字化したいと思います。

 

ちなみに、PVはこんな感じ。これだけだと、健常者と障碍者の恋愛映画に見えます。

映画『聲の形』 ロングPV

 

~あらすじ~

 

高校3年生の石田将也は、小学校時代のある出来事がきっかけでクラスに馴染めず、友達がいない高校生活を送っていた。将也は、この世に未練をなくして自殺しようと考え、小学6年生の時に自分がいじめていた聾唖の少女西宮硝子に会いに行く。自分の犯した罪の大きさから、硝子に拒絶されることを恐れていた将也だったが、意外にも硝子は将也にまた友達になろうと伝えてくれた。将也は自殺をすることをやめ、硝子と友達になることを決意する。

 

評価

 

★★★★★

 

~コミュニケーションが苦手な少年少女~

 

本作では、耳が聞こえず、他人と声によるコミュニケーションが取れないヒロインと、耳は聞こえるけれど他人とのコミュニケーションが苦手な主人公が時に対比され、時に共通項として描かれます。ヒロインが聾唖者ということで、障碍者とのコミュニケーションの難しさを扱った映画かと思われがちですが、今作はあくまで耳が聞こえる、聞こえないにかかわらず、人と人はどのようにしたら分かり合えるのか、という点をテーマにしている映画だと思います。

本作では、主人公とヒロインのほかにも、コミュニケーションに何らかの問題を抱えた人物が登場します。

主要登場人物

石田 将也(いしだ しょうや) 

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本作の主人公。友達が全くおらず、クラスで浮いている高校3年生。

小学6年生まではスクールカースト最上位に位置するクラスの人気者であったが、転校してきた硝子へのいじめ行為についてクラスで弾劾され、自身がしてきたいじめ以上の仕打ちを彼自身がされることになった。仲良くしていた友達から裏切られたことが強烈なトラウマとなり、他人と上手くコミュニケーションが取れず高校でも孤立してしまっている。彼は他人の声を「聴く」ことができず、顔を見ることもできない。彼が顔を見ることができない人物は、顔にバツ印が被った状態で描かれる。

 

西宮 硝子(にしみや しょうこ)

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本作のヒロイン。耳に障碍があり、耳がほとんど聞こえない。

小学6年生のときに将也のクラスに転校してくる。クラスメイトと筆談でコミュニケーションをとろうと試みるが、次第に疎ましく思われ、いじめの標的とされる。どんなに酷い仕打ちを受けようとも、自分から取り乱すことは少なく、すぐに「ごめんなさい」と誤っていた。その行動が逆に周囲の反感を買い、いじめがエスカレートすることになる。

自分に献身的に接してくれる将也に対して好意を持ち、それを声で伝えたいと思っているが、うまく伝わらないことを悩んでいる。また、自分と関わることによって将也とその周囲の人間関係を悪化させたと思っており、自分自身のことを好きになれないでいる。

 

西宮 結絃(にしみや ゆづる)

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硝子の妹の中学生。

写真撮影が趣味で、動物の死骸など、少し変わった写真を撮っている。

詳細が明らかにされていないが、不登校で長らく学校に通っていない。硝子だけでなく、自分にも優しく接する将也に戸惑い、偽善者と非難するが、その優しさが真意であることに気づき、将也になついていく。人付きあいが不器用なことから、クラスの中で浮いてしまい、学校に行かなくなったのだと思われる。

 

植野 直花(うえの なおか)

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小学校時代の将也のクラスメイト。猫カフェバイトをしている。

サバサバ性格と姉御肌っぽいところから、小学校時代は将也と同じくスクールカースト最上位に位置していた。彼女も硝子をいじめていた中心人物であったが、学級裁判により将也一人が犯人に仕立て上げられ、彼女が非難されることはなかった。そのことを悔いており、もう一度将也と友達になろうと振舞うが、硝子に対する態度が変わった将也に戸惑いも感じている。作中でも触れられているが、彼女と将也は似た者同士として描かれている。

 

佐原 みよこ(さはら みよこ)

将也が小学6年生の時の同級生。

手話を学んで硝子をサポートしようとするが、硝子とともに女生徒から疎外されることとなり、不登校になった。

硝子を放り出してしまったことを悔いていたが、高校生になっても嫌なことから逃げてしまう自分を嫌っている。

 

川井 みき(かわい みき)

学級委員を務める女生徒。

転校してきた硝子に対して、最初は優しく接していたが、徐々に直花と共に彼女を排斥していく。真面目な女子として振舞う一方、将也のみに硝子いじめの罪をなすりつけるなど、自分の保身のためなら手段を択ばない一面を持っている。その事に彼女自身は気づいておらず、自分は善良な人間だと思っている。

 

・・・他にも沢山の人物が登場しますが、コミュニケーションに何らかの悩み(または短所)を抱えている人物はこんな感じです。特筆すべき点は、彼らが何か特別な人間として描かれているのではなく、どこのクラスにもいそうな人間として描かれていることです。自分の周りにも実際にいるような人間たちの交流を通して、人と人とのつながりは何か、どうすれば仲良くできるのか、ということを考えてもらいたいですね。

 

~いじめによるコミュニケーション~

 

本作の序盤では、小学校で起こるいじめが描かれます。

最初は、将也とその友人、直花、みきが硝子とみよこをいじめるという構図でしたが、学級裁判後は、クラス全体から将也が疎外されるという構図に様変わりします。特徴的であるのは、誰もが無意識の悪によっていじめを行っているという点です。

将也は硝子の補聴器を奪い、それを校庭に投げ捨てるなど、信じがたい悪事を行います。しかし、一方で硝子が女子から疎外されていることを気遣うような行動も見せます。冒頭では彼とその友人の日常が描かれますが、そこに見られるのは悪事を働く少年ではなく、友人と家で遊んだりするごく普通の少年です。彼にとっていじめというのは、自分が上手くコミュニケーションが取れない相手(硝子)に対して、彼ができる唯一のコミュニケーションツールだったのではないでしょうか。そのコミュニケーションによって彼はスクールカースト上位に一時は留まることができますが、学級裁判により立場が逆転し、自分が無意識的に行ってきた悪意に苦しめられることになります。

みきは自分が将也を苦しめているとは全く思っておらず、高校生になっても将也を悪者にし、自分は善玉であると周囲に訴えかけます。それについて直花に指摘されるも、みきは自分の行為が正しいと信じて疑いません。

本作は、学校という閉鎖空間の中で、誰もが無意識的に遺物(本作でいう硝子、将也)を排除してしまうというグロテスクさを包み隠さずこちらに伝えてきます。

 

~声が聞こえない少女と声を聴かない少年~

 

本作では、主人公である将也とヒロインである硝子の成長が描かれます。

将也は小学校時代の出来事がトラウマとなり、同級生の言葉を聴くことを恐れ、耳を塞いでしまっています。将也は硝子や周囲の人々との触れ合いを通じて、人の想いをもっと知りたいという気持ちを持ち、耳を塞ぐことを止め、周囲の声を聴き始めます。

硝子は耳が聞こえないことで周囲とトラブルになることを恐れ、自分の意見を言わず、自分が謝ることで物事を丸く収めようとします。一見すると優しさとも取れる硝子の行為ですが、自分の考えを相手に伝えず、自分が悪者になって物事を解決する行為は、面倒な相手との対立を避け、安易な方法を選択していることにほかなりません。将也や直花との出会いを通じ、卑怯な自分自身を受け入れ、将也と共に成長することを選択します。

本作は、似た者同士である彼らを対比させることにより、恋愛だけに留まらず、思春期の少年少女の心の変化を微細に捉えています。何度も言いますが、是非10代、20代の若い世代の方々に見ていただき、いろいろなことを考えていただきたい作品です。

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本作で特徴的なワンシーン。将也は耳を塞ぎ、学校内の声を聴かないようにしている。将也が声を聴いていない対象は、顔にバツ印が描かれる。

 

~関連商品~

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

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 スクールカースト上位に位置する人間と、下位に位置する主人公の交流を描いたライトノベル。本作と同様に、学校内のコミュニケーション問題に焦点を当てている。

 

 本作の原作本。未読ですが、近いうちに必ず読みます!

 

 

 

【感想】リアルなウイルス感染症を描く!「アウトブレイク」

※以下、映画のあらすじ、ネタバレを含みますのでご注意ください。

※個人的な感想を多分に含む駄文であることをご承知おきください。

                                 アウトブレイク [DVD]

90年代のアメリカ映画に良作が多いと感じるのは自分だけでしょうか。

今回紹介する「アウトブレイク」は、1995年制作のアメリカ映画で、間違いなく良作に分類されます。俳優陣も、ダスティン・ホフマンモーガン・フリーマンケヴィン・スペイシーと豪華な顔ぶれです。・・・私の大好物ばかりですね。

ただ正直なところ、実際に見てみるまでは、アウトブレイクって「28日後」とか、「アイ・アム・レジェンド」みたいにウイルスの蔓延によって荒廃した世界が舞台なのかと思っていました(実際に見ていたら、全く違ってました(笑))。この映画は、エボラ出血熱などに代表される非常に致死率の高いウイルスをどのように封じ込めるのか(感染を食い止めるのか)という点に焦点を当てた映画です。

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てっきり、こんな町が舞台なのかと・・・。勘違いしてる映画って多いですよね(笑)

~あらすじ~

カリフォルニア州のシーダー・クリークという田舎町で、致死率の高い謎の伝染病が発生した。米国陸軍伝染病医学研究所に勤めるサム・ダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)はいち早く現場に到着し、最初の患者の感染源となったホスト(動物)が何であるかを調べ始める。実は、この伝染病を媒介する「モターバ・ウイルス」には、陸軍のある重要機密が関わっていた。ウイルスの感染を食い止めるため、陸軍は完全に町を封鎖するが、住民の感染者は増大する一方であった。

 

評価

★★★★☆

 

~リアルな演出~

冒頭にも書いたように、私はこの映画を、世界に広まった感染病を食い止めるため、ダスティン・ホフマンが世界中を駆け巡る映画だと思っていました。どんな映画も見てみないとわからないってことなのですが、この映画で描いているのは、一つの小さな町で発生した感染病を、如何にして外に出さないかということに尽きます(世界に蔓延した段階で、もはや手遅れですので)。正体不明の感染病が発生した場合に、アメリカがどのような対応をとるのかについて、結構リアルに描いているように思いました。

本作で感染者が発生したのは、シーダー・クリークという田舎町です。まずアメリカ陸軍が取った行動は、感染者(症状が出た者)の隔離と住民(感染の疑いがある者)が町の外へ出ないように道路を封鎖することです。町の封鎖というのも言葉だけではなく、どんなことをしても一人も外には出さないという断固としたものでした。

例えば、ある家族が封鎖を突破しようと、軍の静止を無視して森の中に車を走らせようとします。町では原因不明の奇病が発生しているので、一刻も早く町の外に出たいという気持ちが痛いほどわかります。しかし、感染のリスクがある住民を町の外に出すわけにはいかないため、ヘリが出動して車を食い止めます。「威嚇射撃で車を止めるんだろう」と思っていたら、なんと車に向けて実弾を放ち、車を燃やしてしまいます。これは、大多数(国民)のために少数(町民)を犠牲にするという、ある種非情な行いのように見えます。しかし、実際にこのようなバイオハザードが起こった際に行われるのは、このような少数犠牲的行為ではないでしょうか。そのようなリアルから逃げず、真っ向から描いているという点が、本作が単なるパニック映画にならないポイントだと思います。最終的には、国民を守るために町に爆弾を投下するという選択が取られることになります。

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町から出ようとすると、兵士に包囲されちゃいます。

 

~全体のバランスの良さ~

感染症のリアルな表現という以外で本作を評価するならば、非常にストーリーのバランスが良いというところが挙げられます。感染によって多数の人々が死んでいくのは非常に重い話なのですが、ウイルスのホストを見つける過程は、アメリカ映画のご都合的な流れが垣間見え、見ている側をちょっと救ってくれます。ラストも、ハッピーエンドで終わりますし。町の封じ込め、ホスト探し、ヘリの戦闘、軍部の暗躍、夫と妻の復縁、可愛いサル、などなど、とても多くの内容が盛り込まれているのですが、とてもバランスがよく、良質な娯楽映画として消化できる内容です。

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1995年といえば、セブン、ユージュアル・サスペクツの演技でケヴィン・スペイシーが非常に注目された年でした。それに比べれば、本作のスペイシーはとても「普通な」役ですね。

 

~関連商品~

謎のウイルスの発生から28日後のロンドンを舞台にしたゾンビ映画。冒頭の、人っ子一人いないロンドンの風景に引き込まれる。

 

アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]

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自分以外の人間がすべて感染者となった町で暮らす男を描いたゾンビ映画。もし、町で自分ひとりだったらこんなことをしてみたいなァーっていう男の夢が詰まっている。

 

 

ユージュアル・サスペクツ [Blu-ray]

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 緻密な脚本、ラストのどんでん返しが素晴らしい名作サスペンス映画。ケヴィン・スペイシー好きにはたまらない。

【感想】超自由人!トム・クルーズのジャック・リーチャーに憧れます。

※以下、映画のあらすじ、ネタバレを含みますのでご注意ください。

※個人的な感想を多分に含む駄文であることをご承知おきください。

                              アウトロー (字幕版)      

 トム・クルーズ主演のジャック・リーチャーシリーズの第2弾「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」が公開されたということで、未視聴の前作「アウトロー」から見てみました。正直、もうトム・クルーズ主演のアクション映画には飽き飽きしていて、全く期待せずに見たのですが、なかなかどうして、トム・クルーズの新たな境地が開拓されたようで、面白かったです。ただ、現在公開中の続編は個人的にはイマイチな内容でした。前作を面白いと感じたがゆえに、続編をつまらなく感じたように思うので、その当たりをつらつらと書いていきます。

~まずは前作「アウトロー」から~

解説

トム・クルーズが一匹狼の元軍人ジャック・リーチャーに扮し、難事件解決に挑む姿を描いたアクションサスペンス。英作家リー・チャイルドによるハードボイルド小説を、「ユージュアル・サスペクツ」のクリストファー・マッカリー監督・脚本で映画化した。米ペンシルバニア州ピッツバーグの郊外で、白昼に6発の銃弾が放たれ5人が射殺される事件が発生。元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕されるが、かつて米軍で秘密捜査官を務めていたリーチャーは事件の不審な点に気づき、真相をあぶりだしていく。ドイツの鬼才監督ベルナー・ヘルツォークが悪役で出演している。

アウトロー : 作品情報 - 映画.com

『アウトロー』予告編

 

評価

★★★★☆

良いところ

 

この映画は、トム・クルーズ演じる元軍人のジャック・リーチャーと、殺人事件の真犯人との攻防を描いたサスペンス映画です。特徴的なのは、ジャック・リーチャーが車はおろか家も持たないホームレスであることです。持っているのは現金のみで、電話の際には公衆電話を利用し、長距離の移動は高速バスまたはヒッチハイクという、究極の「物を持たない主義」を実行している人物なのです。元軍事なので、お金には困っていないようなのですが、生き方そのものは坊さんみたいですね(笑)。このような彼を見て、思わず孤独のグルメ第2話の一コマを思い出したのは、おそらく私だけだと思います。

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「物を持たない=かっこいい」と思わせる一コマ 

 

私はこのようなリーチャーを見て、現代の大人が憧れるヒーロー像を体現しているような気がしました。現代人は、仕事や家庭、ローンの返済など、実に様々なものに縛られて生活しています。一方でリーチャーは家庭もない、車もない、自分が着ている服以外、一切の物を持っておらず、人や物に全く縛られていません。リーチャー自身、周囲の人間は自分のような生き方を羨むはずだと発言しています。何にも縛られないというのは寂しい気もしますが、自分も含め「自由ではない」と感じている現代人にとっては、リーチャーのような生き方はまさに憧れであり、現代の新しいヒーローになりえるのではないでしょうか。

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今作は、ジャック・リーチャーのカッコよさ、シュールさを感じるための映画なのですが、他にも緊迫感あふれる演出が多数見られ、とても良いと思いました。下記に主なポイントをあげます。

 

・冒頭の狙撃シーン

狙撃者の視点で描くことにより、「いったい誰を撃つんだ!?」と観客をハラハラさせる。

 

・ジェームズ・バーの逮捕シーン

観客は、バーが犯人ではないとこの時点で分かっているのですが、バーの素顔を中々見せないことにより、緊張感が増しています。

 

・エマーソン刑事とカマロに乗ったリーチャーが対峙するシーン

車のバックギアに手をかけるリーチャーと、腰に手を伸ばすエマーソンの一瞬の駆け引きが、西部劇を彷彿とさせます。

 

~次は続編「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」~

 解説

 

トム・クルーズ主演でリー・チャイルド原作の小説「ジャック・リーチャー」シリーズを実写映画化したサスペンスアクション「アウトロー」の続編。元アメリカ軍のエリート秘密捜査官ジャック・リーチャーは、現在はたったひとりで街から街へと放浪の旅を続けている。ある日、ケンカ騒ぎの末に保安官に連行されそうになったリーチャーは、この騒動が何者かによって仕組まれたものだと気づく。元同僚のターナー少佐に会うため軍を訪れると、ターナーはスパイ容疑をかけられ逮捕されていた。ターナーを救い出したリーチャーは、軍内部に不審な動きがあることを知り、真相を探り出そうとするが……。ターナー役に「アベンジャーズ」シリーズのマリア・ヒル役で知られるコビー・スマルダース。「ラスト サムライ」などの名匠エドワード・ズウィックが監督を務めた。

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK : 作品情報 - 映画.com

 

『ジャック・リーチャー Never Go Back』 Trailer #1

 前作との比較

 

前作は無実の元軍人を救うために、リーチャーが真犯人と対決するという、サスペンス重視の内容でした。一方で、今作を一言でまとめると、「娘を守るためにリーチャーが敵と戦う映画」です。・・・リーアム・ニーソンが主演できそうな内容ですね。そう、ハリウッド映画がやりつくしている、弱いものを守るために主人公が戦うという、アレです。この手の映画は、よほど新しいテーマ、演出を盛り込まない限り、面白くなりません。96時間がなぜ評価されたかというと、家庭から離れた父の悲哀と、娘を守るためならば手段を択ばない父親像がとてもマッチしていたからです。その点でいうと、本作はこれと言って特徴的なところもなく、よくあるハリウッド映画の一つでしかありません。

前作で良かったのは、リーチャーの探偵的な優れた観察眼や、緊張感あふれる演出でした。本作は、冒頭のファミレスのシーンだけが緊迫感があり、それ以降のシーンは。。。うーんという感じです。リーチャーの推理シーンなどもありません。そもそも、リーチャーの魅力は一匹狼で究極に自由であることなのですが、今作は終始3人行動となり、リーチャーは自分の娘かもしれない女の子を守る立場になっていて、全然自由行動がとれません。これでは、せっかくのリーチャーの魅力が半減してしまいます。原作小説のジャック・リーチャーシリーズはかなりの巻数が出ているということなので、たまには「家族」をテーマにした作品もあってよいように思いますが、映画化作品としては失敗だったと思います。前作で良かった点が今作ではあまりに見られなかったので、どうしても評価は下がってしまいましたね。

 

~関連商品~

孤独のグルメ 【新装版】

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 ハードボイルドなグルメ漫画の傑作。井之頭五郎さんも、男は体一つでありたいと言っています。

 

拉致された娘を救うため、元スパイの父親がパリを駆け巡る!サスペンスアクションの名作です。自分はこれを見ると必ず泣きます(笑)

 

 

【感想】「山猫は眠らない」というのは本当でしょうか?

※以下、映画のあらすじ・ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

                                山猫は眠らない (字幕版)   

聞くところによると、山猫って普通の猫と違ってあまり眠らないんですよね(大ウソ)。

本日観た映画は、山猫が全く出てこない「山猫は眠らない」(原題:Sniper)というジャングルで戦うアメリカの狙撃手を描いた映画です。

今まで全く知らなかったんですが、続編合わせて計5作も作られている映画なんですね。ランボー以上に続編がつくられるということはさぞかし面白いに違いない・・・!と期待十分で鑑賞しました!

 

~あらすじ~

トーマス・ベケットトム・ベレンジャー)はアメリカ海兵隊に所属する狙撃手。南米の幾多の戦闘で生き残ってきた彼であったが、何人もの部下を失ってきた事実に苦しんでいた。そんな折、司令部から新たな暗殺の指令を受けることになったが、彼の元に派遣されてきたのは、腕は一流だが戦闘経験が全くない狙撃手リチャード・ミラー(ビリー・ゼイン)であった。自分の腕に自信を持っているミラーは、経験豊富なベケットの忠告を度々無視してしまう。

 

~評価~

★★★☆☆ 

つまらない映画ではないです。ただ、何度も見たくなるような面白い映画でもないです。アクションシーンも充分見ごたえのある内容なのですが、特筆してすごいと思うシーンはあまりありませんでした。

アクション映画というよりも、本作は「リアルな狙撃手」を淡々と描いた作品と評したほうがしっくりくると思います。

 

~狙撃手のリアル~

 

リアルな狙撃手を描いた映画では、「アメリカン・スナイパー」がありますね。あの映画は、イラク戦争を経験したアメリカ人狙撃手の実体験を基に作られた映画なので、日常と戦闘を交互に繰り返す兵士の苦悩を中心に描いています。

本作の舞台となるのは、南米のジャングル。そこに潜入した二人の狙撃手が、どのようにしてターゲットを暗殺するのかについて、無駄な描写を省いて淡々と描いています。国のためであるとか、正義だ悪だとかいうメッセージはなく、狙撃=仕事とする男の技術に焦点を当てた映画ではないでしょうか。

 

唐突ですが、暗殺=仕事を描いたマイケル・マン監督の「コラテラル」の予告です。

 

狙撃手について私はほとんど何も知りませんが、以下のシーンが特に印象に残りました。

冒頭のヘリのシーン

 

助けに来たヘリに向かって、ベケットが「どうして昼間に来るんだ!敵に見つかるだろうが!」と怒鳴ったのを聞いて、確かにヘリは目立つし、敵陣に昼に助けに来るのはリスクが大きすぎる。。。と思いました。こういう点について、これまで考えたことなかったですね。

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敵狙撃手との駆け引き

 

「もぉ~疲れた、ムニャムニャ・・・」と眠ってしまったミラーを餌にして、敵狙撃手を返り討ちにするシーン。ナイフを使って水に波紋を作り、そちらに気を取られた敵を撃つ!スナイパー同士の駆け引きっていいですよね~。

 

屋敷周辺への潜入シーン

 

どうやって狙撃に適したポイントまで近づくのかなーと思っていたら、牧草に化けて少しずつ匍匐前進していくという(笑)。しかも、全然気づかれない(笑)。さらに、家畜の糞を自分に引き寄せて番犬の鼻をごまかすという戦法も駆使していました。

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この写真のどこかにベケットが隠れています。

 

~上司と部下~

 

この映画は、「上司+部下」のコンビが難題を解決するというバディムビーとしても位置付けられます。中々相いれない二人が、最後には敵を倒してお互いを理解し合うというのがこの手のジャンルのお約束であり、本作もその枠を越えてはいません。

ベケットが超経験豊富で非常に優秀であることは、彼の戦闘や情報収集力から伝わってきます。対するミラーはジャングルに入りたての頃は足元もおぼつかなく、頼りないエリート候補生であることが伝わってきます。「ベケットは確かに凄いけど、ミラーが頼りないなー。本当に二人でミッション達成できるわけ!?」という気持ちになるのも仕方ありません。

 

意見の対立もあって、中々息の合わない二人でしたが、最終的には和解します。

ただし、敵に捕まったベケットをミラーが助けにいくという、ベタベタすぎる展開で・・・。しかも、ラストの戦闘シーンが作中で一番緊張感がなくて、普通(笑)。これが戦闘のリアルなのだと言ってしまえば、そうなのかもしれませんが・・・このラストによって、自分の中では面白い映画にはなりませんでした。

 

~どぉでも良い情報~

 

リチャード・ミラーを演じたビリー・ゼインさん。どっかで見た顔だなと思ったら、バック・トゥ・ザ・フューチャーに端役で出てましたね。

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ビリー・ゼイン - Wikipedia

 

~関連商品~

 

 イラク戦争を経験した狙撃手の自伝を基に作られた映画。度重なる戦闘への参加によって、日常生活に支障をきたしていく狙撃手の姿が描かれる。

 

 ベトナム戦争に従事するアメリカ兵を描いた映画。ベケットを演じたトム・べレンジャーは、冷酷な軍曹バーンズの演技が高く評価され、ゴールデングローブ賞 助演男優賞を受賞した。

 

 

 

【感想】絶対に子供に見せてはいけない映画「クラウン」

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呪われたピエロの衣装を着てしまった男が、子供を食べる悪魔に変貌する過程を描いたホラー映画。いかにも低予算かつB級な映画なのですが、久々に面白いホラー映画に当たりました!後から調べてみたら、製作が「キャビンフィーバー」、「ホステル」で知られるイーライ・ロスなんですね。今回は監督での参加ではありませんが、やっぱりイーライの息がかかった作品は面白いです!

~あらすじ~

 

クラウン(道化師)の衣装を着て息子の誕生日を祝ったケント(アンディ・パワーズ)であったが、その衣装が皮膚と一体化していることに気付く。衣装のルーツを調べたところ、古より北欧に伝わる悪魔「クロイン」の皮膚でできていることがわかり、ケントの体は徐々に悪魔に変貌していく。

~日本じゃできない映画~

 

ピエロ恐怖症という言葉を聞いたことがあります。なんでも、メーキャップをしたピエロでは、その感情を読み取ることが難しいため、恐怖を感じる人がいるそうですね。ところが、この映画に登場するクラウン(道化師)は、誰に対しても須らく恐怖を与える悪魔です。

不動産会社に勤めるケント(アンディ・パワーズ)は、担当する空き家の倉庫からクラウンの衣装を見つけます。クラウンが大好きな息子のために、自らコスプレして誕生パーティを盛り上げるのですが、彼の体と衣装が一体化し、脱げなくなってしまいます。そこから、彼の体が徐々に変化し始める・・・という内容です。ホラー映画としてはよくありがちな、怪物に変わる系(狼男、ザ・フライなど)なのですが、この映画では、徐々に悪魔に変わっていく主人公と、怪物に変わった夫を助けようとする妻のメグ(ローラ・アレン)の精神的葛藤を丁寧に描いていて、感情移入しやすい映画になっています。例えば、自分の体の変化を感じたケントが、自殺をするためにアパートに閉じこもる場面があるのですが、そこにクラウンが大好きな少年が表れ、ケントを気遣うしぐさを見せます。そんな子供を食べてしまうかもしれないという自分自身への恐怖と、子供を食べたいという悪魔の感情が入り乱れていて、見ていてとても辛かったです。しかも、結局その心優しい少年はケントに食べられてしまいます!心やさしい少年が食べられる映画なんて、勇気がないと作れないですよね。。。少なくとも、日本ではなかなか難しいんじゃないでしょうか。

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子供の声に耳を塞ぐケント。子供に対する食欲を抑えられなくなってきていることを窺わせる。

 

~最も怖いポイント~

 

この映画、悪魔「クロイン」が子供食らっていくシーンも十分怖いんですが、悪魔ではなく人間に対して恐怖を抱くシーンがあります。終盤で悪魔はメグに、子供を一人連れてくれば(食わせてくれれば)ケントの体は返してやると取引を持ち掛けます。「まさか、おいおいマジかよ。。。」と思いましたが、なんとメグは他人の少女を車に乗せ、悪魔の元に連れていくのです。寸でのところでメグが思いとどまり、少女は助かるのですが、この一連の流れは一番緊張しました。「結局、真の悪魔は人間だったか。」的な軽薄なオチにならず、ほんと良かったですね(笑)

f:id:n0risuke:20161111001119p:plain子供を連れてくれば、呪いを解いてやるとクロインはメグに取引を持ち掛ける。

 

~クロインは現実にも存在する~

 

もうはっきり言いますが、本作では子供の死体(臓物とか、腕とか、骨とか)が遠慮なしに出てきます。子供の死体をここまで見せるのって、製作サイドがある程度吹っ切れてないとできないですよね。私はいろいろとホラー映画を観てきたので、面白いホラー映画の一つとして本作をカウントするのですが、こういう映画って「普通の人」は見たいと思わないはずです。子供が食べられる映画なんて、面白おかしく見たいとは思わないのが大多数でしょう。ですが、現実として、子供が誘拐された挙句、殺されてしまう事件は日本でも起きています。本作を娯楽映画と片付けることも簡単ですが、現実にも悪魔クロインのように、子供を狙っている人間がいると思うと、また映画の見方が変わってくるのではないでしょうか。

 

 

◆脇役に注目!

 

ケントを殺して呪いを解こうとする衣装屋を演じたピーター・ストーメアさん。

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 どっかで見た人だなぁーと思ってたら、、、

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・・・ッッ!

 

ロストワールドでめちゃちっさい恐竜コンピーをスタンガンでいじめてたら、友達カーターに忘れられてグループから逸れた挙句、コンピーの集団に嬲り殺される恐竜ハンターを演じた人じゃないですかァーッ!

ロストワールド見た人は絶対忘れない役者さんですよね!

 

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 ハエと一体化してしまった男の末路を描く傑作ホラー映画。虫のDNAと融合したからって、どこぞの蜘蛛男みたいにヒーローになれるとは限らないんだよッ!

 

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コスプレが趣味の冴えない中年のおっさん(哀川翔)がなぜかコスプレ衣装で超人的な力を得るギャグヒーロー映画。ちなみに、衣装と体は一体化しません。

 

子供にしか見えない道化師「ペニーワイズ」が子供を襲うホラー映画。「クラウン」と同じく、この作品も被害者は子供である。原作はかの有名なスティーブン・キング

 

 

 

【感想】フィラデルフィア(Philadelphia)

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エイズによる不当解雇と闘う人々を描いたアメリカ映画「フィラデルフィア」を観ました。トム・ハンクスデンゼル・ワシントンの共演ということで、昔から気になっていた映画なのですが、社会的差別を描いた作品ということもあり、なんとなく疲れそうなので、見るのを避けてきました。今回、またもHuluで映画を探していたら、トム・ハンクス主演作がいろいろと追加されていたので、勢いで見てしまいました。

~あらすじ~

フィラデルフィアの弁護士事務所に勤務するアンドリュー・ベケットトム・ハンクス)は、上級弁護士を目指す優秀な弁護士。周囲の人々にも優しく接し、事務所や顧客からも信頼を得ている彼だったが、実は同性愛者であり、エイズに侵されているという秘密があった。そんな時、彼は重要な書類を紛失しそうになったということで、事務所から突然解雇されてしまう。仕事のミスではなく、エイズを理由として解雇されたことを確信した彼は、以前法廷で戦った弁護士ジョー・ミラー(デンゼル・ワシントン)に、不当解雇を理由に事務所を訴えることを相談する。  

~感想~

題名「フィラデルフィア」の意味するところ

多民族国家であるアメリカ合衆国では、その成立上、人種差別を扱った映画が数多く制作されてきました。例えば、「夜の大捜査線(1967年)」、「アメリカン・ヒストリーX(1998年)」、「フルートベール駅で(2013年)」などが挙げられます。「フィラデルフィア」はエイズを扱った映画ですが、エイズの恐ろしさを伝えるというよりは、人種差別と同様に不当な差別との戦いや自由の獲得を描いた作品だと思います。それは、タイトルの「フィラデルフィア」からも伝わってきます。

そもそも、この映画のタイトルは何故「フィラデルフィア」なのでしょうか。最も安易な考えに飛びつけば、作品の舞台だから・・・?そうであれば、何故フィラデルフィアが作品の舞台なのでしょうか。

フィラデルフィアについて、ネットで少し調べてみました。語源は「兄弟愛」を意味するギリシア語であり、かつて独立宣言の起草が行われた都市であることがわかりました。フィラデルフィアの成り立ちには、人間に対して分け隔てない愛情をもつことと、人間は誰からも縛られず自由であることが関わっていたのです。映画の中にも、「人間はみな平等である」というフレーズが登場します。これらのことから、フィラデルフィアというタイトルが自由や平等について描いた本作に選ばれたことがわかります。 

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平等であること、自由であること

エイズに侵される主人公ベケットは同性愛者であり、本作には数多くの同性愛者が登場します。ベケットの家族のように、同性愛者に理解ある人もいれば、「ホモは嫌いだ!」と堂々と言ってのける人も登場します。事実、ミラーも同性愛者を嫌っています。ここで注意したいのは、本作は同性愛者を嫌う人を批判する映画ではないということです。

裁判の冒頭、ミラーは陪審員に向かってこう話します。「ベゲット氏の所属していた事務所は、彼がエイズに感染していることに気づき、彼を解雇することにしました。私たちが、エイズの人々を遠ざけるように。その気持ちは私にも理解できます。皆さんがこの行為について道義的、道徳的にどう判断しようとそれは自由です。しかし、彼らは法律を違反した。私はこの点を証明します。」

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このセリフからも読み取れるように、本作はあくまで病気による不当解雇について法廷という場でどのように証明するかについて重きを置いており、人々が同性愛者やエイズ患者に対してどのような感情を抱いてもそれは当人の自由であると言っています。他人に対してどのような感情を持とうが、それも一つの自由であることに変わりはありません。重要なことは、その感情によって法律が破られ、人々が不当な差別を受けることがあってはならないということではないでしょうか。

~関連商品~

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 同じくエイズを扱った作品。主演のマシュー・マコノヒー、助演のジャレット・レトがアカデミー賞を受賞。

 

【感想】コズモポリス(Cosmopolis)

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夜の11時頃、huluで映画を漁っていたら、以前レンタルしたのに結局見なかった「コズモポリス」を発見。デヴィッド・クローネンバーグの監督作品なので、少し気合を入れて鑑賞。

 

~あらすじ~

エリック・パッカー(ロバート・パティンソン)は若くして金融取引で成功した億万長者。オフィス代わりのリムジンに乗り、今日も秒単位で取引を行う彼だったが、元の変動を読み切れず、莫大な損失の危機にあった。また、エリックの暗殺をほのめかす脅迫文も届き、彼の一日は大きく狂っていく。

 

~思ったこと~

現実感のなさ

この映画では、主人公エリックの人生最後の一日が描かれます。移動手段兼オフィスであるリムジンでビジネスパートナー達と仕事をしていくエリックですが、謎の脅迫文と元の変動により、暗殺と破産の危機という二重の窮地に立たされていきます。億万長者なのに、一瞬で破産してしまうことがわかったら、私であれば冷や汗だらだらでとても平常ではいられないと思うのですが、エリックは大損をすることがわかっても一切焦ることはなく、まるで他人事のように振舞います。脅迫文についても同じく、周りのSPの心配をよそに、一切恐怖を抱きません。

それどころか彼は、仕事の合間を見つけては妻以外の人とセックスしまくる始末。肝心の妻に対しても、町で見かける度に何度も「君とセックスしたい!」とマジ顔で迫るのですが、「あなたからはセックスの匂いがする。。。」と言われ、ことごとく振られてしまいます。また、SPの女性とセックスした際にも、「そのテーザー銃で俺を撃ってくれ!」などと変態めいたことを言い放ちます。このような彼の言動から見えてくるのは、彼にリアリティが欠如していることです。

非常に優れた防音性をもち周囲と隔絶されたリムジンで、指先一つで莫大な金額を操作していることからも、彼のビジネス・日常が現実世界と離れていることが伝わってきます。彼は、自分が生きていることを確かめるために、セックスや痛みを欲しがるのではないかなーと思いました。

 

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ナッツを食べながら外貨の変動をチェックし、予想を立てるエリック。まさに指先一つで何十億ドルもの金額を操作している。

 

ラストの解釈

物語のラストで、エリックは自分の命を狙う暗殺者ベノ・レヴィン(ポール・ジアマッティ)と対峙します。ベノはエリックの会社の元社員で、エリックから人間扱いされなかったことに恨みを持ち、彼を殺そうとします。ベノは、「テラスで優雅にランチを食べている人間に腹が立つ」などと言い、エリック個人に対する恨みに加えて、下流層から上流層(金持ち)への妬みや恨みの感情を持っていることがわかります。(ネズミの死骸を持ったデモ集団が本編の各所に登場します。ネズミ=下流層というイメージなのでしょうか?)映画のラストは、ベノがエリックの頭に銃を突き付けた後にブラックアウトします。映画全編が、エリックの視点で進みことから、ブラックアウト=エリックの死であると私は思いました。

 

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左でを自分で打ち抜くエリック。

 

~全体を通して~

全編を通じて、登場人物たちが哲学的な会話をしまくります。金融取引がどうのこうのという話より、断然そっちのほうが多いです。登場人物にもどこか現実感がない(人間的でない)部分があり、物語自体も淡々と進みます。人を選ぶ映画であることは間違いないのですが、2度3度鑑賞することによって、新たな解釈が生まれるタイプの映画であると思います。

 

~雑多なこと~

エリックの警備主任トーヴァルを演じた役者さんを、何かの映画で見たことあったなーと思っていたら、「フルートベール駅」に警官役で出演していました。あっちはノンフィクションものですが、一人の男の人生最後の日を描いた点では本作と共通ですね。

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警備主任のトーヴァルさん

 

~関連商品~

コズモポリス (新潮文庫)

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本作の原作本。映画でよくわからなかったところがわかるかも。。 

 

 トーヴァル役の、ケヴィン・デュランドさんが出演する映画。コズモポリスと同じく人生最後の日を描くが、2009年にアメリカで起こった黒人青年射殺事件を題材にしている。筆者の中でベスト10に入る映画。